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ラジカル神姫オムニバス Gene Lessの用法要領 1.まーともかく神姫買ってきましょう武装神姫。神姫SSだしね~。 2.神姫で遊ぶなり股を開いたり閉じたりするなりバトルロンドするなり電ホビやネトコミのマンガでも見るなりしてまずはキャッウフフ分を補充しましょう。本作は各話特定の神機が主役のオムニバスなので対応する神姫で遊んでおくとなお良し! です♪ 3.本作見ましょう。 4.後は内容のありえなさに叫ぶも良し、自分の神姫もこーなっちゃうんじゃないかとガクガクブルブル震えるのも良し、逆にこの異様なノリにハマって中毒症状になるも良し。そのへんお好きにどーぞー(酷) 5.あ、そうそう言い忘れてましたけど、各話の登場人物はおまけの方に載ってますので(出オチも多いもんで)気になったら確認してみてください。ただしもっとしょーもない小ネタばっかりなので貴方の脳にムダ知識が増える事うけあいですけどね(笑) 注意! 本作を読むとあなたの神姫感が崩れるおそれがあります。かと言って当方責任とる気は毛頭無いのであきらめてください(ヲィ) 本作に使われてるネタがよくわかんなかったらヒトに聞く前にとりあえずググりましょう。そんでもって原作知ってる方は逆にコレあくまでネタとして使ってるので細かい事には眼をつむりましょう。じゃないと潰しますよ目(マテコラ) 異様に会話が多いのは仕様です。読みづらいとか思っても言いなさんな(獏)まーコントでも見てる気になれば気にならないってば。 それでも言い足りない文句があったら「おーさまのみみはねこみみ~!」的にコメント欄にでもぶちまけましょう。ガマンは体によくないですよ? てかねー、こんな用法容量なんて間に受けるなよ~?(笑) 目次へ
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MMS戦記 外伝「敗北の代価」 「敗北の代価 11」 注意 ここから下は年齢制限のある話です。陵辱的な描写やダークな描写があります。 未成年の方は閲覧をご遠慮下さい。 □ 重邀撃戦闘機型MMS「リカルダ」 SSSランク 二つ名「ミョルニル」 オーナー名「春日 凪」♀ 20歳 職業 神姫マスター 真っ赤に燃え滾るヒートナギナタを振り回し,戦国時代の武将のように名乗りをあげるリカルダに対峙する神姫たちは、ぽかんを口を開けて呆然と立ち尽くす。 オーナー1「な、なんだァ!?あいつ!」 砲台型C「あれがSSS級の化け物神姫、リカルダか」 悪魔型「び、びびるな!!!敵は一騎だァ!!!」 一瞬、神姫たちに動揺が走ったが、すぐさま体制を建て直し、リカルダを取り囲むようにじりじりと移動する。 春日はバトルロンドの筐体に備え付けられているタッチパネルを操作し、状況を把握する。 春日「残り、88機!敵は3つの集団に分かれている」 春日はマーカーで3つのくくりを作る。 春日「まずは集団A、陸戦タイプの神姫を中心とした大集団、数は50、どうせこちらの速度にまともについていけない、適当につぶしておけ」 リカルダ「イエス」 春日「次に集団B!!空戦タイプの神姫を中心だな、数は1ダース(12機)、機種はアーンヴァル、エウクランテ、アスカが多いな・・・まずはこいつらから血祭りにあげろ、皆殺しだ!」 リカルダ「OK」 春日「最後に集団C・・・砲戦タイプの神姫ばかりだな!数は20、機種は戦艦型4隻、戦車型6両、砲台型10台!鈍亀ばかりだ、うまく誘導して同士撃ちにさせろ」 リカルダ「了解」 春日はバンっと筐体を叩く。 春日「見敵必殺(サーチアンドデストロイ)!!!見敵必殺だ!!立ちはだかるすべての障害を排除しろ!」 リカルダ「Sir,Yes sir MyMasterrrrrrrr」 ヒュイイイイイイイイイイイイイイイ リカルダのリアパーツに装備されている巨大な素粒子エンジンが緑色に輝く粒子を撒き散らし唸り声を上げる。 巡洋戦艦型A「奴を倒せば兜首だ!賞金を手に入れて富と名声を手に入れろ!」 装甲戦艦型A「支援射撃を開始する!全神姫突撃突撃ィ!!」 数隻の戦艦型神姫が主砲をリカルダに向けて発砲するのを皮切りに再び神姫たちが吼えるように声を上げて、武装を手に掲げてドッと津波のように襲いかかる。 神姫「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ」 リカルダはまったく臆することなく、巨大な素粒子エンジンを全開に吹かして真正面から突撃を仕掛ける。 リカルダ「あは、あはっはは!!この程度の数の神姫でこの俺を倒せるとでも?笑わせるッ!!!」 轟とエンジンを轟かせてリカルダは燃え盛るナギナタを引っ掴んで迎え撃つ。 砂漠を砂埃を立ち上げて、真っ先に攻撃を仕掛けてきたのは、ハイスピードトライク型 アーク、ハイマニューバトライク型 イーダ、モトレーサー型 エストリル、クルーザー型 ジルリバーズのバイク使いの4神姫だった。 バイク使いの4神姫はリカルダの姿を認めると、ばっと散開し一斉に手持ちのマシンガンやキャノン砲、ハンドガンで射撃を開始する。 リカルダ「遅い遅すぎるぜ、それで速く動いているつもりか?」 リカルダは地面スレスレをホバリングするように砂山や岩を盾に攻撃を回避し、ズンと地面を強く踏みしめると、同時に地面に巨大な亀裂と穴が穿つ。 パンッと空気が爆ぜる音がしたと同時に、ハイスピードトライク型 アークの紅の武装が異常な形にくにゃっと歪みバラバラに分解されて吹き飛んだ。 □ ハイスピードトライク型 撃破 真横を走っていたクルーザー型のジルリバーズの目が見開かれる。 ジルリバーズ「なっ・・・」 ぐしゃぐしゃに潰れたトライク型の後から破壊音が衝撃波となって届く。 ドギャアアアアアアアアアン!! チカチカと何かが光ったと思った瞬間、モトレーサー型 エストリルの薄いピンク色の体が黄色い閃光に飲み込まれて爆散する。 □ モトレーサー型 撃破 ジルリバーズ「あ、あああ・・・」 彼女の眼前で瞬く間に僚機が沈む。 あまりにも速い、度外れた速さ、圧倒的な凄まじい破壊の力に彼女は驚愕し見届けることしか出来ない。前方でハイマニューバトライク型イーダが変形を解除し、大剣を構えて対抗しようと、リカルダに攻撃を仕掛けようとするが・・・ 次の瞬間、ジルリバーズの横を薄緑色の塊が軽々と宙を舞いすぐ脇を通りぬけていく。 風が唸る。 ゴキン 鈍い金属音が聞こえる。その音の正体を最初は理解できなかったが、崩れ落ちるバラバラになった自分の体がジルリバーズの視界に移ると意味を理解した。 ジルリバーズ「は・・・はや・・・速すぎる」 □ クルーザー型 ジルリバーズ 撃破 ズドンズドンズドン!! 戦艦型神姫の砲弾がリカルダの周囲に着弾するが、リカルダはまったく意に介さず無視する。 リカルダ「おいおい、なんだ?その動きは舐めているのか?あああん?的撃ちじゃねーんだぞッォ!!!!!」 リカルダは顔を歪ませて新たな敵に向かって突進する。 音速を超え、超高速の剣戟に、対峙する神姫たちはまったく捕捉しきれなかった。 悪魔型「うおおおおおおおおおお!!」 巨大な刀を携えた悪魔型が雄叫びを上げて強化アームを振りかざし突撃するが、リカルダは悪魔型が刀を振るう前に胸部を突き殺す。 □ 悪魔型 ストラーフMk-2 撃破 間髪いれずに今度は巨大なハンマーを携えた白い悪魔型とソードを構えた黒い悪魔型が躍り出るが、リカルダは副腕のレールキャノンをくるんと廻して、胸部を正確に撃ちぬく。 □ 悪魔型 ストラーフ・ビス 撃破 □ 悪魔型 ストラーフ 撃破 脇を小柄な2体の神姫が槍と剣を携えて飛び出してきたが、リカルダは2体まとめて燃え盛る紅蓮の炎を纏ったヒートナギナタで文字通り薙ぎ払った。 □ 夢魔型 ヴァローナ 撃破 □ 剣士型 オールベルン 撃破 樹脂の溶ける焦げ臭い不快な匂いを撒き散らして四散する2体の神姫。 リカルダの強烈な攻撃の様子はさながら嵐のようであった、音よりも速いリカルダの攻撃は空気を引き裂き、爆ぜ、対峙する全てのものを打ち砕く。 次々に撃破のテロップが流れる。 まるで音楽を奏でるかのようにリカルダは縦横無尽に戦場を駆け回り、刈り取るように神姫を撃破していく。 □ 犬型 ハウリン 撃破 □ 猫型 マオチャオ 撃破 □ リス型 ポモック 撃破 □ フェレット型 パーティオ 撃破 □ ウサギ型 ヴァッフェバニー 撃破 □ 騎士型 サイフォス 撃破 □ 侍型 紅緒 撃破 □ 花型 ジルダリア 撃破 □ 種型 ジュビジー 撃破 □ サソリ型 グラフィオス 撃破 春日「30、31・・・」 春日はにやにやしながら腕を組んで数を数える。 怯えた白鳥型が大剣を盾に悲鳴をあげて後ずさるが、リカルダは大剣をガードの上から叩き割った。 ズン・・・ 真っ二つに引き裂かれた白鳥型の表情には驚愕の念が浮かんでいた。 彼女は決して弱い部類の神姫ではなかった。数多の戦場を先陣切って誉高く駆け、敵を討ち取ってきた武装神姫である。 だが、違う。 こいつは違う。 一刀両断されて始めて違いに気がついた。 こいつは普通じゃない。 白鳥型「ば・・・化け物め・・・」 □ 白鳥型 キュクノス 撃破 春日「32!!総数の3分の1を殲滅した、残り68!さっさと片付けるぞ」 春日は筐体の画面を操作して状況を把握する。 リカルダ「だめだ、弱すぎる・・・お話にならない」 参加していた神姫のオーナーたちはたった数分間で100体いた神姫の3分の1が潰滅した事実にただ言葉も無く息を呑む。 いま眼前で繰り広げられた戦い、リカルダの桁ハズレの強さ。 次々となすすべもなく撃破されていった仲間たちを見て陸戦主体の残った神姫たちは完全に戦意を喪失して、武装を放り出して逃げ始めた。 カブト型「だ、だめだァ!!こんなの勝ってこないよ!」 クワガタ型「ひ、ひィいいい」 ヤマネコ型「やってられるかよ!!!」 がしゃがしゃと手持ちの武器を捨てて逃げようとした瞬間、後方からチカチカと青白い光が瞬く。 建機型「!?」 ドッガアズガズッガアアン!! 装甲戦艦型A「撃て撃て!!撃ちまくれェ!!」 巡洋戦艦型A「逃げる奴は敗北主義者だ!!!敵もろとも攻撃しろ!!!」 重装甲戦艦型A「奴を倒せば1億円なんだぞ!!断じて引くな!!後退は認めん!!」 数隻の戦艦型神姫が味方もろとも無差別に砲撃を始め、瞬く間にフィールド内は阿鼻叫喚の地獄絵図に変わった。 ドンドンッドオドドン!!ズンズウウン・・・・ カブト型「ぎゃあああああああ!!」 虎型「ウワァ!!」 丑型「いやああああああああああ!!撃たないで撃たないでェ!!!!!」 猛烈な艦砲射撃がリカルダと周囲にいる神姫たちを巻き込んで行なわれる。 戦艦型の取り巻きの戦車型、砲台型も味方を撃つことに戸惑っていたが、手段を選んでいる場合ではないと悟ったのか、一緒になって見方もろとも攻撃を始めた。 □ 建機型 グラップラップ 撃破 □ 虎型 ティグリース 撃破 □ 丑型 ウィトゥルース 撃破 □ ヘルハウンド型 ガブリーヌ 撃破 □ 九尾の狐型 蓮華 撃破 次々とフレンドリーファイヤーの表示が出ながら撃破のテロップが踊る。 瞬時に周りは地獄と化した。その光景は凄惨そのものだった。目の前で多くの神姫たちが生きたまま焼かれ、重症を負い、そして粉々に砕かれて宙を舞った。 ズンズンズン・・・・ ものすごい爆煙と砂埃で砲撃地点は黒茶色の巨大なキノコ雲が立ち上り、ボンボンと神姫が爆発する音と赤い炎が巻き起こる。 上空を数十機の航空MMSが心痛な面持ちで眺めていた。 天使型「下は地獄ですね」 セイレーン型「うわあァ・・・」 ワシ型「イカレ野郎もろとも吹っ飛ばしてしまえ!!」 ワシ型が手を掲げてファックサインをする。 ドッギュウウウム!! 戦闘機型「おぐ・・」 戦闘機型の胸部を黄色い閃光が貫き、爆発する。 □ 戦闘機型 アスカ 撃破 爆煙と砂埃の中から勢いよくリカルダが飛び出し、真っ赤に燃え盛るヒートナギナタでワシ型MMSを一刀両断で切り捨てる。 □ ワシ型 ラプティアス 撃破 リカルダ「コイツァ最高だぜ、ふ・・・恥も外聞もなく味方もろとも攻撃してくるとはなァ・・・」 リカルダは笑いながら次々と航空MMSをハエのように叩き落としていく。 □ コウモリ型 ウェスペリオー 撃破 □ 戦乙女型 アルトレーネ 撃破 天使型「このおおおおおおおおおおおお!!」 天使型の一機が、上空からライトセイバーを構えて突撃してくるが、 リカルダは最小限の動きで回避し後ろを取る。 リカルダ「はずしやがったな!まだまだガキの間合いなんだよ!」 天使型「そ、そんな!!うわああああ!!」 ズッドン!! □ 天使型 アーンヴァル 撃破 天使型の頭部を跳ね飛ばした次の瞬間、リカルダを含む周囲の航空MMSたちにむけて葉激しい強力なレーザー砲の一斉射撃が加えられる。 ビシュビシュウウビッシュウウウウン リカルダ「おわっ!!」 あわててリカルダが回避する。 ズンズンズン!! □ 天使型 アーンヴァル 撃破 □ 天使型 アーンヴァル・トランシェ 撃破 □ 天使型 アーンヴァルMk-2 撃破 □ 戦闘機型 アスカ 撃破 リカルダの回りを飛んでいた航空MMSを強力なレーザーが貫き、空中に炎 出来た光球を作る。 重装甲戦艦型「ヘタクソォ!!貴様らどこを狙っている!!」 巡洋戦艦型A「ウルセェ!てめえが撃てっていうから撃ったんだろがァ!!!」 装甲戦艦型A「畜生畜生!!」 装甲戦艦型B「ひゃっはああーーー!!!もうだめだァ!!」 巡洋戦艦型B「なにをしている攻撃の手を休めるな!!!」 またしても後方にいる戦艦型神姫の一群が味方もろとも巻き込むのも承知の上で砲撃を加えてきたのである。 1度ならず2度までも、味方を巻き込む非道な攻撃を行い続ける神姫たちに観客たちはブーイングを鳴らす。 観客1「お前らさっきからナニやってんだよ」 観客2「このクズヤロウ!!さっさとしとめろ!」 観客3「誤爆誤射ばっかりやんてんじゃねーんだぞ!!このダボォ!!」 観客4「こいつらさっきから味方撃ちしかしてねえーーーーー」 観客5「なにがしてーんだよ!!このクソヤロウ!!」 グラスやゴミをフィールドにいる戦艦型に向かって投げつける観客たち。 オーナー1「うるさい!野次馬ァ!!」 オーナー2「黙れ黙れ!」 オーナー3「どーしようが俺たちの勝手だろ!」 オーナー4「戦いに誤射誤爆はつきものだろが・・・ボケが!」 オーナー5「装甲戦艦!!副砲撃て!!!あの野次馬連中を黙らせろ!!」 装甲戦艦型B「了解、モクヒョウ カンキャクセキ 撃ちかたーーーーーーーーーはじめ!!」 あろうことか、戦艦型神姫のうちの一隻が観客席に向かって副砲で発砲しはじめたのである。 ズンズンズズン!! 観客1「うわあああああああ!!撃ってきたぞ!!」 観客2「キャアアアアアアアアア!」 観客席の2階の中央のテーブルに砲弾が命中し、料理が爆発して飛び散る。 ドガアアアン!! 2階の観客席で春日たちの戦いを観戦していた神代の顔にべちゃっりとケーキのクリームが降りかかる。 脇に立っていたルカが悲鳴をあげる。 ルカ「きゃああ!!マスター大丈夫ですか!!」 神代が顔に付いたクリームを手で拭き取り舌でぺろっと舐めて片つける。 神代「大丈夫だ、問題ない」 バトルも観客席も戦艦型神姫の無差別な艦砲射撃で大混乱になる。 司会者の東條があわててマイクで放送を行なう。 「観客の皆さんはフィールド上の神姫にモノを投げないでください!!フィールド上の神姫は観客の皆さんに攻撃しないでください!!危険です」 フィールドにいる戦艦型が反論の激を飛ばす。 巡洋戦艦型A「最初に攻撃してきたのはアイツラだろ!!これは正当な反撃行為!自衛のための防衛行動だ!!」 装甲戦艦型B「戦艦に喧嘩売るとは上等じゃねえか!!ぶっ殺すぞ!!!!」 観客3「こいつらなんとかしろよ!!」 観客4「危ない!!危ない!!危ないよ!!」 観客5「おまえらは一体誰と戦ってんだ!!このボケカス!!」 春日はアッハハハと大声を上げてパンパンと手を叩いて喜ぶ。 春日「すばらしいこれこそ混乱だ!!戦場に混乱はつきもの!!最高じゃないか!!」 リカルダ「さあて・・・と残りはC集団のみ、ちゃっちゃと終わらせてやろう」 リカルダはヒュヒュンとナギナタを振り回し、突撃する用意に移る。 戦艦型神姫の一群と戦車型、砲台型が多種多様な砲口をリカルダに向ける。 戦車型A「パンツァー1より全パンツァーへ、敵は高速戦闘に特化した航空MMSだ、対空榴弾装填!!穴だらけにしてやれ」 戦車型B「パンツァー2了解」 戦車型C「パンツァー3了解」 戦車型D「パンツァー4了解」 砲台型A「砲撃モードに移行!焦るなゆっくり狙って確実に当てろ!」 砲台型B「畜生!ブチ落としてやる」 砲台型C[負けネーゾ] 重装甲戦艦型「全艦、全砲門開けェ!!火力で磨り潰せッ!!!!」 巡洋戦艦型A「火力とパワーはこちらの方が上だ」 装甲戦艦型A「一億円は俺のものだ」 巡洋戦艦型B「くそったれ、やってやる」 装甲戦艦型B「蜂の巣にしてやる」 ギラギラと目を光らせる大砲を主兵装備とする武装神姫たち 。 戦艦型神姫は巨大な体に据付けられた主砲をゴリゴリと動かす。一撃でも命中すれば神姫を粉々に粉砕できる強力なレーザー砲を搭載し、全身に対空機関砲とミサイルを装備している。単純な火力だけでは戦艦型神姫は最強クラスの戦闘能力を有する。また分厚い装甲に守られ、撃破するのは非常に困難だ。 戦車型神姫は戦艦型とはいかないまでも、強力な戦車砲とそれなりの厚い装甲を備えている。また何台かの同型の戦車型とコンビを組んで安定している。 砲台型もがっしりと地面に腰を下ろし、砲撃モードに移行し、優秀なFCSによって高い命中率と速射性能を有した滑空砲を搭載し待ち構える。 大型の戦艦型神姫、中型の戦車型、小型の砲台型のバランスの取れた鉄壁の布陣で、リカルダを待ち構える20機あまりの重武装の神姫たち。 リカルダとは対照的に、機動性を完全に最初から捨てて、がっしりと待ち構える神姫たちに隙はなかった。 こいつらは、味方ですら遠慮なく攻撃する下種だ。だが、その分勝つことには躊躇せず破壊的なオーラを纏っていた。 間違いなく強敵、そう感じ取った春日は内心、ほくそ笑んでいたが、命令を下す。 春日「大砲屋風情が調子に乗るなよ・・・リカルダ!!遠慮はいらん!!攻撃しろ!」 リカルダ「イエス、イエスマイマスター」 ぐっと身を固めるリカルダ。 さっきまで野次を飛ばして騒いでいた観客たちも一斉に押し黙る。 そしてひそひそと話し声がもれる。 観客1「まさか本当にあの砲火の前に突っ込むんじゃないよな?」 観客2「ありえんだろ?あの完璧な布陣になんの策もなしに突っ込むのは自殺行為だ」 観客3「あの陣形は点や線の攻撃なんて生温いものじゃない、面での攻撃だ」 観客4「面制圧か・・・この猛砲撃を掻い潜って奴らを殲滅できるとしたら、文字通り化け物だ・・・そんな神姫がいるのか?」 To be continued・・・・・・・・ 次に進む>[[]] 前に戻る>「敗北の代価 10」 トップページに戻る
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ウサギのナミダ ACT 0-3 □ その日の土曜日、俺は拾った神姫をつれて、海藤の家へ向かった。 海藤は、高校時代からの友人だ。 武装神姫を仲間内で一番に始めたのが彼だった。 俺の仲間内はみんな、海藤の影響で神姫を始めている 海藤が連れている神姫がうらやましくて、俺も神姫を持ちたいと思うようになった。 それほど、彼と彼の神姫の関係は良好だったし、その神姫は魅力的だった。 いまでも仲間内で一番神姫に詳しい。 だから、今回のことも、彼を頼ることにしたのだった。 電車に揺られること30分ほど。 いかにもベッドタウンの駅、というところで私鉄を降りる。 海藤の家までは歩き慣れた道だった。意識もせずに角を曲がり、住宅街の町並みを歩く。 俺は程なく目的の家の前に立った。インターホンのボタンを押す。 古びているが、普通の一軒家である。 海藤はここに独りで住んでいる。 しばらくして、玄関の扉が開き、少し小太りの、小柄な男が顔を出した。 「よお」 「よく来たね、ささ、入って入って」 海藤は機嫌よく、俺を招き入れる。 一軒家は独りで住むには広すぎる。 海藤が趣味を満喫するには最適だが、やはり寂しくなるものらしい。 俺が時折顔を出すと、必ず歓待してくれる。 俺は海藤に続いて扉をくぐる。 すると、 「いらっしゃいませ」 鈴の鳴るような声が、海藤の肩あたりから聞こえてくる。 俺が視線を向けると、そこには神姫がにこやかに微笑んでいた。 「こんにちは、アクア。お邪魔するよ」 このアクアの微笑みにやられて、海藤の家からの帰りに神姫ショップに寄って、何度イーアネイラ・タイプのパッケージを手に取ったか知れない。 高校時代の仲間のほとんどが、このアクアの笑顔をにやられて、海藤がうらやましくなって、神姫を始めた。 それほど、イーアネイラのアクアは魅力的だった。 海藤の招きで通されたのは、広い居間だ。 その広い壁の一面を、巨大な水槽が埋めていた。 そして中には色とりどりの魚達が優雅に泳いでいた。 海藤のもう一つの趣味がこれだ。 熱帯魚の飼育だけでは飽きたらず、いまは学業そっちのけで水族館でアルバイトをしている。 そんな海藤が人魚型の武装神姫を選んだのも、当然の成り行きだ。 俺は居間に置いてある小さなテーブルに手みやげをおく。 海藤はそのままキッチンに入り、コーヒーを入れてきた。 手みやげはミスドのドーナッツである。男二人のくせに、俺達は甘いものに目がなかった。 しばらく俺達は、何も言わずにドーナッツを頬張り、コーヒーを味わった。 二つ目のドーナッツを腹に収めたところで、海藤が切りだした。 「それで、神姫の素体交換だって?」 「ああ」 ちょうど俺も二個目を食べ終え、傍らにあったバッグに手を伸ばす。 中から大きめのハンカチにくるまれたものを取り出す。 「これは……」 海藤は、俺が拾ってきた神姫をつまみ上げる。 メンテナンスモードになっている神姫は、ぴくりとも動かない。いまはただの人形同然だ。 手足に巻いた包帯が痛々しい。 そう思わせるほどに生々しい肌の質感が、この神姫にはある。 「こんな素体は見たことがないな」 「言ったろう、訳ありだって」 「見たところ、素体の外皮は妙に生々しくて継ぎ目もないけど……どうやら中身は規格からはずれてはいないみたいだ」 「できそうか?」 「交換だけなら、そう時間もかからないよ」 海藤は慎重に頷いて、そう請け負ってくれた。 「よろしく頼む」 俺が言うと、海藤は早速、リビングの端に据えられたパソコンに、その神姫を持っていった。 すでにスタンバイされているクレイドルの上に載せる。 アクアが海藤の肩から飛び降り、自身もクレイドルのような装置に収まった。 「アクア、バックアップ開始」 「はい、マスター」 アクアは装置の中で目をつぶる。 すると、パソコンの画面にいくつかウィンドウが自動的に開いていく。 アクアがパソコンを操作し、あの神姫の記録をバックアップしているらしい。 ……バックアップ? 「そのまま素体を入れ替えるのなら、念のためバックアップして置いた方がいいよね」 海藤が当たり前のことのように言う。 だがしかし、 「ああ、それはもっともなんだが。アクアはそいつの記録を見ない方がいい……」 「ひっ」 遅かった。 装置の中で、アクアは目を見開いて愕然としている。 「ストップだ、海藤」 俺が言うよりも早く、海藤の手がパソコンを操作していた。 神姫からのメモリの読み出しがストップされる。 「アクア、大丈夫かい?」 「は、はい……ちょっと驚いただけです」 やはりアクアには刺激が強すぎたようだ。 海藤が、パソコンにバックアップされたデータを呼び出した。 ディスプレイに、昨夜俺が見た画像の一部が表示される。 「これは……なんだ、これは」 いままでに見たことのない苦い顔で、海藤が呟く。 「お察しの通りだ……言っただろ、訳ありだって」 「……」 海藤は画像が表示されていたウィンドウを消すと、パソコンのいすにもたれ掛かって座り、ため息を一つついた。 そして、俺に向き直ると、 「なあ遠野……悪いことは言わない。この神姫のオーナーになるのは、やめた方がいいと思う」 「なんだと?」 「ごめん、怒らないで聞いてくれ。君のことを思って言ってるんだ」 海藤の真剣な眼差しに、俺は怒りを引っ込めざるを得なくなる。 「君がどんな神姫のオーナーになろうと、それは自由さ。 でも、この神姫自体が危険な代物なんだ。 この妙に人間くさい素体だって、違法製造のカタマリだよ。 いまの神姫の記憶だって、へたすれば、持っているだけで犯罪だ。神姫風俗自体が違法なんだから。 この神姫のオーナーというだけで、犯罪者扱いされる可能性があるんだ。 武装神姫はホビーだ。楽しい趣味の世界だよね? そんな神姫の世界に、現実のハイリスクを伴ってまで、踏み込む必要があるかい?」 俺は、海藤の落ち着いた語りに、冷静になって考える。 海藤は話を続ける。 「君のオーダーは、記憶や性格はそのままに、ユーザー登録をクリアして、素体を交換すること、だよね。 でも、記憶を消去して、全く新しい神姫としてオーナーになることもできるんだ。 あの記憶がある限り、神姫風俗にいた神姫であることが露見するリスクはつきまとう。 そして、どんなに君が否定しても、神姫風俗とのつながりを疑われるよ。 そうまでして、このままの神姫のオーナーになる必要があるかな? そんなリスクを犯さなくても、いいんじゃないかって、僕は思うんだ」 俺はうつむいて、海藤の言葉を反芻した。 こいつは、本当に俺のことを心配して言ってくれている。 そういう奴だ。 海藤の言うリスクについても、わかっているつもりだ。 「……だけどさ」 だが。だがしかし。 「どんな神姫にも幸せになる権利が、あるんじゃないのか?」 「つらい記憶を抱えたまま新しいオーナーの神姫になることが、この神姫の幸せかい?」 「わかってる……わかってるさ。こんなのは、俺のエゴなんだってことは」 でも、譲れなかった。この気持ちだけは。 「こいつさ……目が覚めて、泣きながら俺に言うんだぜ……壊してくれって」 「……」 「ほっとけないだろ。俺がはじめて神姫にと望んだ奴が、自殺志願なんて……俺が何かできる訳じゃないけれど……でも、教えてやりたいと思った。 こいつがこいつのままでも、いいんだって……そんなに悲しい言葉言わなくたって、俺がこいつを望んでいるって…… 普通の神姫として生きられるんだって、教えてやりたいんだ」 「……」 「……だめか?」 上目遣いに見た俺に、海藤は諦めたような大きなため息を一つついた。 「まったく……君らしいよ」 「いいのか?」 「君がそこまで言うなら、いいさ。僕はもう、何も言わないよ」 「ありがとう、海藤……」 俺は安堵のため息をついて肩を落とす。 やはり持つべきものは友達だ。 「それじゃあ、さっさと終わらせますか」 海藤は元気にそういい放つと、アクアの代わりにバックアップの操作をした。 作業机に工具を並べていく。 手持ちぶさたになったアクアが、海藤の様子を眺める俺に近寄ってきた。 「あの子はきっと大丈夫ですね」 「君のマスターが、作業するからか?」 「いいえ」 確信を持ったまなざしで、アクアは俺を見上げて言った。 「遠野さんが、こんなに想ってくれるんですから」 こんな気恥ずかしいせりふを、神姫からぶつけられるとは思わなかった。 俺はあまりの照れくささに、アクアの微笑もまともにみられず、ひたすらにそっぽを向いた。 「よし、これで終わりだ」 海藤が明るい声でそう宣言した。 パソコンのキーを一つ、軽く叩く。 パソコン脇のクレイドルには、あの神姫が横たわっている。 痛々しい包帯は、もうない。 愛らしいヘッドはそのままに、新品の身体に交換されている。 いま、パソコンからクレイドルを通して、神姫にデータがダウンロードされている。 さきほどバックアップされた過去の記録はもちろん、そもそも削除されていた、武装神姫としての運動プログラムや装備の運用プログラムなども含まれる。 「最低限の格闘用データと銃撃戦用データは入れておいたよ。 装備はこれから選ぶんだろう? その装備にあったデータを後から追加すればいい」 海藤はそう説明した。 ありがたい配慮だ。さすが長い付き合いだけに、俺のことをよく分かっている。 俺はこの神姫のために、オリジナルの武装を用意するつもりだった。 何者でもない、俺だけの武装神姫のための装備を。 やがて、ディスプレイの作業表示が100%を示す。 俺は息を飲む。 その神姫は新たな姿で目覚めようとしている。 PCから、作業完了の電子音が軽やかに鳴り響いた。 ■ 軽やかな電子音とともに流れ込んできた信号が、わたしに覚醒を促す。 わたしは、のろのろと瞳を開く。 飛び込んできた光景は、今まで見たこともないものだ。 おおきな、おおきなガラスの器に、水がたくさん貯められており、そこに色とりどりの魚が踊っていた。 まるで夢のように現実感がない。 「状態チェック、オールグリーン。無事に目覚めました」 きれいな声がすぐ隣から聞こえた。 神姫用のポッドユニットだろうか。 そこから一人の神姫が出てきた。 きれいな人。 わたしのメモリに入っている情報から、イーアネイラ・タイプの神姫と分かる。 彼女は、わたしににっこりと微笑みかけると、視線で正面を見るように促した。 そこには、一人の男性がいた。 眼鏡をかけた端正な顔。 わたしを自分の神姫にしたいと言ってくれた、あの人だ。 「あの……」 わたしが自分の思いを言葉に紡ぐより早く、システムプログラムがわたしに口走らせる。 「オーナーの登録をします。名前を音声、またはPCのキーボードから入力してください」 わたしの瞳は、目の前にいる端正な顔を捕らえている。 わたしを連れてきてくれた人。 わたしに違う世界を見せてくれると言った人。 「遠野貴樹」 わたしは、その人の名を初めて知った。 その名前はわたしの深い部分に滑り込み、刻まれた。 「あなたをなんとお呼びすればよろしいですか? 呼び方を入力してください」 「マスター」 答えは決められていたようで、すぐに返事が来る。 そして次は…… 「わたしの名前を入力してください」 プログラムが口走らせる事務的な口調とは裏腹に、わたしの心はドキドキと高鳴っていた。 大きな期待、そしてもっと大きな不安。 23番でもなく、名無しでもない。お客さんが勝手につける一時の名前でもない。 ただひとつの、わたしの名前。 「ティア」 そっけないくらいの口調で、わたしの瞳に映る人は応えた。 わたしは事務的な口調で確認を取ると、すぐにそれは了承された。 意志が、起動プログラムから、わたしに戻ってくる。 「あ……」 わたしは改めて目の前の人を見る。 彼の名前は遠野貴樹。わたしの…… 「マスター……」 「ティア、でよかったか? おまえの名前」 いいもなにも。 初めて確たる名をもらったわたしは、はじめて自分が存在していることを確認した。 何者でもなく、ティアという名の神姫として。 「そんな……わたしなんかには、もったいない名前です」 思ったことを口にすると、 「『わたしなんか』って言うな」 低い声で怒られた。 わたしはマスターに怒られてばかりいるような気がする。 わたしは少しおびえて、マスターを見上げた。 マスターは何ともいえない表情で、ふい、と目を逸らす。 ……なにか、わたしはマスターの気に障るようなことをしてしまっただろうか。 わたしはおろおろとしながら、マスターを見上げるしかできなかった。 マスターは何を怒っているのだろう。 想像もつかない。 わたしはまだ、この人のことを何も知らないのだ。 でも、マスターに怒られるのは悲しくて、つらくて、情けないことのように思えた。 だから、わたしの瞳から、自然と滴が溢れてくる。 「なに泣いてるんだ」 「だ、だって……」 「……だからティアって名前にしたんだ。泣き虫だからな、おまえ」 ティア。涙の意味だと分かる。 意地悪な言葉をそっけないくらいの口調で言い放つマスター。 わたしは、どんな表情をしていいか分からない。 分からなくて、マスターのことも分からなくて、心に寄り添うこともできなくて、心細くて、また涙が溢れてきてしまう。 結局、泣きやまないまま、わたしはマスターに連れられて帰路についた。 マスターが意地悪なことを言ったのは、実は照れ隠しだったことを知るのは、ずっとあとのことだった。 □ 「すまなかったな、変なところを見せてしまって」 「いや、いいよ。君の神姫がどんな子かもよく分かったし」 海藤の家の玄関。 帰り際に俺は、海藤に軽く謝った。 正直、ティアの態度にはまいった。 これでは俺が自分の神姫を泣かせているみたいではないか。 結局、ティアはアクアにずっと慰められていたが泣きやまず、いまも俺のカバンの中で泣き続けているようだった。 覚悟はしていたが、先が思いやられる。 「それにしても……」 見送りに来た海藤は、にやにや笑いを顔に貼り付けて、 「なんだかんだ言って、やっぱり君は世話好きのおせっかいだよね」 とのたまいやがった。 「ほっとけ!」 俺はクールで理知的なキャラで通っているのだ。 自分もそう望んでいるし、多くの友人がそういう印象を抱いてくれている。 しかし、付き合いの長い友人になると、それが化けの皮と言いやがる。 熱いハートを持った義理人情の男と思われているのだ。 そういう性格が悪いことだとは思っていないが、普段から俺はスマートでいたいと思っている。 暑苦しい奴だと思われるのは心外だし、御免だった。 俺達のやりとりを見て、海藤の肩の上で、アクアが笑っている。 いつかティアも、こうして笑えるようになるだろうか。 それはきっと、これからの俺次第なのだろう。 そう思うとなんだかとてつもなく大変なことのような気がしてきて滅入る。 だが、それを成し遂げたいと、切に願っている自分がいるのだ。 不機嫌な表情の俺に、海藤はハンカチか何かの包みを俺に差し出した。 「これは……」 「こっちで処分しようかと思ったけど、まあ、何かの役に立つかも知れないし」 それは、ティアの元の素体だった。 妙に生々しい感触の、小さな人型。 持っているだけで違法かも知れないその素体は、正直、処分してもらっても、かまわなかったのだが。 「もともと君の持ち物だ。君がどうするのか決めるのがいいよ」 「……」 俺はしばらくその包みを見つめた後、そっとバッグにしまいこんだ。 「迷惑をかけたな、恩に着る」 「そう思うなら、また遊びに来てよ。今度はティアも一緒に、さ」 気のいい友人はそう言って笑ってくれた。 ◆ 遠野の背中を見送りながら、アクアが口を開いた。 「マスター……あの二人、うまくいきますよね?」 「……アクアはどう思う?」 「うまくいくと思います、きっと。だって、遠野さん……あんなにティアのこと気にかけているのですもの」 海藤は難しい表情をしながら、アクアの言葉を聞いていた。 やさしいマスターには珍しく、厳しい目で、遠ざかる友人の背中を見つめていた。 「マスターは、そう思われないのですか?」 「わからない……わからないよ」 嘆息するように言葉をはく。 「二人の仲は、きっとうまくいくと思うよ。遠野はああ見えて世話好きだし、きっと長い時間をかけて、ティアを自分の神姫にしていくんだろうね。 大変だとは思うけど、その覚悟もできていたみたいだし……」 「だったら……」 「問題はあの二人じゃないよ。もっと他のことさ。 ティアは……普通の神姫じゃないんだ。 神姫風俗にいることが知られたら、どんなことになるか……見当もつかないよ。 何かあったときには、僕たちの思いもつかないような試練に晒されるかも知れない。 ……それが心配なんだ、とても」 遠野の背中が見えなくなり、海藤はきびすを返した。 ゆっくりと門の中へ入る。 相変わらず厳しい表情を崩さない海藤に、アクアは話しかけた。 「それでも……わたしはよかったと思います」 「なぜ?」 「あんなに嬉しそうな遠野さん、初めて見ました。 いつも神姫のオーナーになりたいって言って、そのたびに寂しそうな表情をしていましたもの。 遠野さんにあんな嬉しそうな表情をさせたのは、間違いなくティアですから……」 「そうか、そうだね……今は、新しい神姫のプレイヤーが生まれたことを、素直に喜ぶべきだね」 「はい!」 いつも前向きなアクアに何度救われたことだろう。 この笑顔にあこがれて、友人たちは皆神姫を始めたが、誰よりもアクアの笑顔にメロメロなのは、マスターである自分だということを、海藤は自覚していた。 次へ> トップページに戻る
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キャラクター一覧 キャラクター一覧ねここレッドミラージュ シューティングスター シューティングスターバリエーション 風見美砂 雪乃 黒姫 鈴乃 アガサヤークトヴォルフⅡ 緋夜子 *New*雷火二一型 志郎=アーガイル アリア 芽河原 明 ネメシスエトワール・ファントム エトワール・レネット 小野一樹 疾風 ねここ (イメージCV、落合祐里香) ねここの飼い方シリーズ・メインヒロイン。 猫型MMSマオチャオ(爪猫)タイプ。 みさにゃんに一目惚れされて買われる。 今ではねここもみさにゃんらヴ。 本編では元気一杯の姿で描かれることが多いが、本当は出会いの時のシーンのように繊細で人見知りする性格。 喜怒哀楽の波が激しく、調子による能力変動が激しいため常に能力をフルに発揮できていない。 ちなみに市販品だが製造段階で微妙なミスがあったらしく、AIのクロック数と処理速度が通常の神姫よりも多少高い。 (考えすぎるとオーバーヒートするのは廃熱システムがそれに見合うレベルまで強化されていないため) ちなみにマシンでの訓練はブースター使用時など、屋内で出来ないシチュエーション時でしか行わない。 もっぱらホイ○イさんや他に美砂が作った訓練用仮想敵機との対戦が主になっている。 ……というより殆ど遊びと狩りの延長上とも言える。 尚、シューティングスターを本格的に使用するようになって以降 『雷光の舞い手(ライトニング・シルフィー)』 という通り名が定着した模様。 戦闘では格闘戦主義。射撃は基本的にへたっぴ。 シューティングスターでどんな遠距離からでも一瞬で間合いを詰め、一気に接近戦へと持ち込むのが戦闘パターン。 以前は一回ショートレンジに持ち込むと、ブースターは切り離して身軽な形態になる場合が多かったが、現在は相手や状況下によってはシューティングスターを装備したまま戦闘を行うケースも多い。 分身はジャマー+立体映像ホログラフによるシステム、詳しくは本編をどうぞ。 ○ねここフィンガー ねここフィンガー+スパークエンドは、本来相手の神姫のボディーに出来るだけダメージを与えず、電撃による速やかな機能停止だけを目的とした武装……のはずだけどジャンヌ戦ではそうは見えませんね(大汗 ちなみにねここの運動性を損なわない様、限界まで小型化した電撃発生装置を搭載している為、エネルギーの都合上使用は基本的に左右各1回づつのみ。 SS等他からのエネルギー供給を何らかの形で行えば別かもしれませんが。 尚、爪(研爪ではなく、本体側)を射出するワイヤークローを牽制用として装備。 レッドミラージュ シューティングスターに次ぐねここの装備として製作された機体。 始祖がSFS(サブ・フライト・システム)であり、戦闘用としては当初全く考慮されていなかったシューティングスターとは違い、当初から戦闘を前提にして設計・製造された。 シューティングスター以上の推進力を誇るが、戦闘を前提に設計された為に陸戦専用とされ、跳躍以上の飛行能力は持っていない。 その分シューティングスターをはるかに上回る重装甲、高出力を誇り大型神姫クラスとのパワー戦闘にも十分対応できるスペックを持つ。 外見・武装に関しては、ティグリースの推進装置である炎襲機を2基4発設置しており、横から見ると寝かせたV字型に配置されているのが特徴。更に脚部にはアークの推進装置が設置されており、ローラーダッシュが可能になっている。これによって安定性の上昇とねここの脚部への大幅な負担減が実現されている。 武装に関しては2連装式HEML、両サイドに設置されたラピッドランチャー、両サイドに設置された可動式の朱天を装備しており、距離を選ばない戦闘が可能になっている。また朱天はその長大な刃部分を電磁誘導ガイドとして利用したレールガンにもなっている。 またツインHEMLの基部にはシロにゃんが設置され、レッドミラージュ制御の補助を行う。またガンナー役も勤める事が可能になっており、ねここの射撃の欠点をある程度緩和してくれる、と思われる。 必殺技として一定時間メガコンデンサーに溜め込んだエネルギーとリミッター解除を併用したフル・ドライブシステムも搭載しているが、連稼働時間は非常に短く、またねここ自身にも多大なエネルギーを一気に注入するために常に作動停止の危険を孕んでいる。 シューティングスター アーンヴァルの飛行ユニット及びプロペラントブースターを2対使用、それを水平配置する事によって前方への爆発的推進力を獲得している。 普段は地上スレスレを駆けるように使うが、飛行も可能になっている。 その高推力により、背部に他の武装神姫を搭乗させるサポートキャリア的運用も可能。 固定武装は背部中央に後ろ向きに設置された旋牙。 これは初期型から一貫して搭載されており、推力を生かした突撃戦などの状況下に置いて、通常の腕部ユニットと換装し使用される。 また初期型では射撃兵装は取り付けられていなかったが、改良後は両舷にLC3レーザーライフルを装備する事になる。 手持ち兵装として使用する場合と違い、シューティングスター側からのエネルギー供給も行うため、通常に比して威力が上昇している。 また装備直後、外見は其のままに汎用エネルギー砲として使用可能にするための改造を受けている。尚この時点で通称がローエングリンと名づけられている。 (本編そのじゅうさん時点で装備、以後標準武装として使用中) また火力が必要とされる状況下の場合、両翼を中心とした各部ハードポイントに各種ミサイル、パイパーマグネティックランチャー、ビームキャノンなどの搭載も行う。 シューティングスターバリエーション 映像詳細 『ねここの飼い方、そのよん~そのじゅうさん前半』まで使用されてた初期モデル。 通常型と違いLC3レーザーライフル及び追加ウィングが未搭載なのが特徴。 射撃武装は皆無なのだが、運動性及び格闘戦能力はこちらのヴァージョンの方が優れているため、通常型の採用後も運用されるケースはあるようだ。 公式ランクではセカンドリーグに所属(光と影時点) 昇格直後はスランプだったようだが、現在は順当に勝ち星を重ねている。 杏仁豆腐が大好き (作者の知り合いの猫が好きらしく、なんとなくキュピーンと採用) 風見美砂 (イメージCV、国府田マリ子) ねここと雪乃のご主人様 。 見た目は長身でスラリと均一のとれたプロポーションを持つ17歳の女子高生 。 腰まであるポニーテールと中性的な格好が特徴 。 両親はともに長期海外転勤中、なので二階建て一軒家で1人暮らしを満喫中。ちなみに預金通帳も置いてったので使い放d(ゲフンゲフン ……そして重度のガン○ム&スパロボヲタク。部屋のDVDラックには種~1st、その他モロモロがズラリ。 その影響で模型製作から始まり、ねここの武装チューンも含めて製作能力が結構高くなっている。 割とオールマイティに何でもこなす人だが、基本的には1,5流止まりなので実質器用貧乏。 なので劇場版のような事態の場合、調整役やパイプ役を自ら務める場合が多い。 人に対しては基本的に優しくほや~んとした態度で接する。実はねここ以上のマイペース人間。 雪乃 (イメージCV、田中理恵) 犬型MMSハウリンタイプ たまたまTVで目撃したねここに一目惚れして、押し掛け女房してくる変わり種。 基本的に冷静で礼儀正しく品性方向なのだが、一回決めると猪突猛進する癖がある。 更には経験不足ゆえの常識感覚に欠けた所もあり、初登場時のいきなり「結婚してください」などと言う仰天行動に出ることがある。 ちなみに前マスターとの仲が不仲だったと言うわけでもないが、雪乃の方は醒めた感情だったようだ。 現マスターである美砂との関係は、現在は一応良好。ただ恥かしい所を見られてしまったので頭が上がらなくなった節が有。 バトルリーグではセカンドリーグ上位ランクに所属 現在(そのじゅうに)時点でも未だねここより遥かに実績、経験共に豊富。 但し才能の差で自分ではねここに及ばないと思い込んでいるフシがあり、ねここのサポートに回ることが多くなっていく。 前マスター時のバトルスタンスは、両腕に吠莱壱式とGEモデルLC3レーザーライフルを装備。 その脚力を生かした高速機動戦で相手の接近を許さずに仕留める戦法を得意としていた。 (だからこそ超遠距離から一瞬で格闘レンジまで持ち込み、なおかつアッサリ仕留めてしまったねここに惚れた……のだと思う、多分) 現在の戦闘スタンスは蓬莱壱式とSTR-6ミニガンを両手に装着し、中距離での高機動戦を重視したスタイル。 またねこことの連携戦では、バスターランチャーなどの重火器を好んで使用する。 黒姫 鈴乃 (イメージCV、井ノ上喜久子) アガサのマスター。 名家である黒姫家の次期当主。 有名お嬢様学校の高校生。学校内では神姫マスターという事実は隠している。 外見は美しい黒髪の長髪を持つ両家のお嬢様、深窓の令嬢といった感じだが中身は割と悪魔。 言動に常に含みとミステリアスさを持たせつつ喋るのが趣味。 部屋には研究所並みのスパコンが並び、自身のハッキング能力も高い……が、その能力を基本的に倒錯した方向にしか使わない。 基本的に快楽主義者、トラブルが起こると良い暇つぶしが出来たと思う性格。 アガサとの関係は、倒錯した愛情に満ち溢れている。 アガサ (イメージCV、桑島法子) 鈴乃の神姫。元々はストラーフ型だったのだが、何故か現在はムルメルティア型。 性格は冷静沈着、口数はあまり多くないが鈴乃の身の回り関連に気配りの利く良い娘。 ただし鈴乃譲りの含みのある発言をするのが曲者。 スピットファイア(がみがみ女)の二つ名は、偏執的な重火力装備と戦闘スタイルによるもの。 徹底した面攻撃と空域制圧で立ち止まることを許さず、 エネルギーを空費した神姫を、地雷原や空中機雷地帯に追い込んで仕留める。 近距離装備もガトリング砲やマイクロミサイルの飽和攻撃や指向性炸裂装甲など、"相手の特性を殺す"ことに特化しており、そのいやらしいスタイルでファーストリーグに食い込んでいる。 癖のあるマスターの元、無理難題や無茶を言われる気苦労の毎日を過ごしつつも、何だかんだと付き従っている辺り、マスター同様に何処か歪んでいるといえる。 ヤークトヴォルフⅡ ネメシスの憂鬱編で用いられた、アガサ専用の武装ユニット。 通常レギュレーションでは運用不能になってしまった初期装備を見直し、重火力による固定砲台的な運用から、機動殲滅戦へとそのコンセプトを改変したヤークトヴォルフⅠ(劇中未登場)をベースに更なる改良を図った機体。 バックパックのフローティングユニットと大型ホバー推進器により極めて高い機動性を誇り、強大な出力に支えられ武装ペイロードも初期装備程ではないにしろ非常に高く、スナイパーライフル(ヘビーマシンガン兼用)、ミサイルポッド、汎用ロケット弾ポッド、迫撃砲、火炎放射器(劇中未使用)、ガトリング砲などの豊富な武装に加え、荷電粒子砲まで搭載しており、尚圧倒的な攻撃力を誇る。更にはフィールドジェネレータ発生器まで搭載しており、走攻守ともに安定して高い能力を誇る。但しペイロードの限界と機動力優先の関係上、ジェネレータと荷電粒子砲の外側装甲以外には防御装備、特に物理装甲は殆ど追加設置はされておらず、素体自体もムルメルティアの基本装備のままの為、基礎防御力そのものは低く、また重装備の為、完全なインファイトに持ち込まれると脆い。 名前の由来は、その火力と機動力を生かして狩りをするかのように敵を追い詰めていく、その戦闘スタイルから取られた。 ○フルバースト状態 展開された荷電粒子砲・正式名称『バルジファル』がよくわかる。 ○フィールドジェネレータ展開状態 緋夜子 *New* (イメージCV、神田朱未) 鈴乃の神姫。飛鳥型。アガサの妹神姫でもある。 性格はとても明るく天真爛漫。愛嬌もあり可愛がられる存在。だが人の痴態をビデオに納める等、自分の趣味思考に関してはマスター譲りの歪んだ性癖と無茶苦茶な行動力を見せる。 また姉であるアガサに重度の愛情を懐いており、特にアガサの映像や写真を撮るのが趣味。それが高じて他人の事も撮影するようになった。 名前の読み方は『ひよこ』であるが、本来は(ひ↑よこ)と発音するのが正しいのだが、ピーピーと(鶏の)ひよこのように煩い為、鶏の方の(ひよこ→)と発音されてしまう。 戦闘スタイルは飛鳥の装備を三発化した高機動・高運動性の装備を用いての銃撃・剣劇が主なスタイル。 但し基本的にアガサの直掩機としての振る舞いがメインであり、本人はその役割について大変満足しているらしい。 雷火二一型 緋夜子用装備として製作された機体。 飛鳥型の標準装備をベースに、その主機である『回転翼・飛輪』をバックパックに2機追加装備して三発化した機体。 フレキシブルアームによって接続された飛輪は自由度が高く、最大速度を含む機動性と運動性の双方を大きく向上させている。 また3発化の高出力に支えられている為ペイロードも多く、武装はバックパックの飛輪の上面ラッチに『三七式一号二粍機関砲』を計2門背負い式に装備し、その外側に付けられている主翼のハードポイントに『flak17 1.5mm機関砲』がそれぞれ2門づつ、計4門懸架式に備え付けられている。左腕にも『三七式一号二粍機関砲』を装備しており、計7門という嘗ての第二次大戦の重戦闘機のような武装配置となっている。 腰後部に装備された補助翼(標準装備の主翼)のハードポイントにも武装が配置されており、通常は三六式航空爆弾や、それを改装した対地ロケット弾などを計4発、半隠蔽式に装備する。 また格闘戦用の装備として、『霊刀千鳥雲切』を2本、腰後部の飛輪基部に装備している。 運用法は標準的な飛鳥型の物と大差はないものの、純粋な対空戦闘よりも対地攻撃、それも7門の機銃掃射による近接航空支援に比重を置いている。これはアガサとの連携運用を前提に置いたものだが、単独戦闘においても強力な武器となっている。 総合性能としては重武装を施しながらも、飛鳥型特有の高い空中運動性を損なう事無く全体的な性能を向上させており、バランスの取れた機体となっている。 その一方で、門数こそ多いものの最大火力が『三七式一号二粍機関砲』の為に絶対的な打撃力に欠ける傾向があり、特に重装甲相手の戦闘では苦戦を強いられることが予想される。 これは元々重火力のアガサとの連携運用を前提としている為に、一撃の火力で相手を倒す事よりも、弾幕を張ることによって相手の足止めを行う事を主目的としているからである。 但し単独戦を見据えた何らかの追加装備が今後施される可能性も否定できない。 志郎=アーガイル (イメージCV、石田彰) アリアのマスター。 ヨーロッパ系アメリカ人と日本人とのハーフ。美砂の幼馴染にして(自称)婚約者。現在は大学生。 外見は芸能人も真っ青の美形なのだが、性格に問題がある上に当人は割と一途なので中身を知ってる人間にはモテない。 自他共に認める変態クールだが、義理人情に意外と厚く信頼できるタイプ。但し火遊びも好きなので全面的な信頼をすると怖い。 能力もあるのだが、前述のような性格のため他人には紙一重に見えている。 偽悪(変態)趣味が有。 アリア (イメージCV、北都南) 志郎の神姫、アーンヴァル型。 眼に改造を受けており、通常のアーンヴァルと違って眼の色が赤いのが特徴。 その眼の印象の強さと抜き手による強烈な一撃の印象が相まって、 紅の牙 の二つ名を持つ。 性格は感情を表に出さないタイプ。しかしマスターへの信頼と忠誠は厚い。 ただ暴走しがちな志郎のお目付け役としても機能するため、その辺りに関するツッコミは過激。 バトルリーグでは、アメリカマイナーリーグよりセカンドリーグに移籍。 主にType-0と呼ばれる、ストラーフの基本武装にアーンヴァルの装甲を追加したモジュールを装着して戦う。 尚、例のパイルバンカーはその後電磁誘導式に改めたそうだ。 装備類はType-9まで存在しているらしいが、真相は不明。 芽河原 明 (イメージCV、小清水亜美) ネメシスのマスターで美砂のクラスメイト。 年齢よりも幼さを感じさせる小柄な少女で、やや乱雑に伸びた髪で目元が常に隠れ気味。 何時も暗い表情と半開きのような眼つきをしているものの、素顔はかなりの美少女。 家族構成は両親と明の3人だが、両親は共に仕事で忙しくコミュニュケーションは殆どない。 そのため内向的で積極性もなかったが、ネメシスとの出会いの後、少しづつ変化が訪れつつある。 本を読むのが趣味。ジャンルも純文学からオカルトまでと比較的幅広い。 神姫・メカニックに関してはあまり知識がなく、ネメシスに任せ気味になっている。 ネメシス (イメージCV、水樹奈々) 天使型MMSアーンヴァル(B)タイプ 明の父親のツテにより購入され、明の下に届けられた神姫。 性格はアーンヴァル型の例に漏れず生真面目なのだが、生真面目さが災いして情緒不安定になりやすく、不満やストレスを必要以上に溜め込む傾向があり、また時々凶悪な性格の片鱗を見せることもある。 また起動直後の状況と、その後の明の行動により「自分はいらない神姫である」という思いを強く抱えていた。 現在は原因の解消により、以前よりは精神的に安定したものの、それでも尚ソリッドな一面を持つ。 戦闘スタイルは銃撃及び砲撃戦をメインに据えた航空高速戦闘。回避よりも攻撃を重視しているのが特徴。 特に空対地戦での一撃強襲をもっとも得意としている。そのためシューティングスターレプリカ(エトワール・ファントム)との相性が非常に良く、新人でありながら数々の上位神姫を倒すキルスコアをマークした。 またアーンヴァル型でありながら格闘戦のセンスも高く、素体同然の状態でマオチャオ装備のねここと互角以上に渡り合った。尚、格闘武装がパイルバンカーなのは、パワーが非力なアーンヴァル型の弱点を補うため。 尚本編では触れられてはいないが、父親が発注した際金に糸目をつけず頼んだため、白雪姫シリーズと呼ばれるサードパーティ製の高性能素体を使用している。 その為か、通常時は蒼い瞳をしているのだが、極度の興奮状態等、感情が昂ると瞳が赤く輝く特徴がある。 エトワール・ファントム 『光と影』においてネメシスが使用した機体。 ネメシス用にアキラが組み上げた高速機動用ユニット。 基本的にはねここが装備するシューティングスターのカラーリング違いのデッドコピーだが、オリジナルのドリル部分が後方迎撃用の斜め機銃に換装されているのが唯一の変更点。 本質的には直進しか出来ないSFS(サブフライトシステム)に近いシロモノだが、アーンヴァル特有の優れた空戦適性により、ネメシスはねここ以上に使いこなす事が出来た。 エトワール・レネット ●アサルト形態 『ネメシスの憂鬱』において使用した機体。 元々シューティングスターのデッドコピーに過ぎなかったエトワール・ファントムに代わるネメシスの新装備として構想、組み上げられた機体。 基本設計・構造としてシューティングスター(以下SS)を参考にしつつも、実際の運用レベルとしてはS・F・S(サブ・フライト・システム)の延長上に過ぎなかった機体を、本格的な空対空・空対地戦闘に耐えうるように再設計している。 SSそのままの推力・加速性を維持したまま、運動性・武装搭載能力等の戦闘能力を上昇させるのは既に困難であり、そのためSSに搭載されていた直進用エクステンドブースター4基のうち2基を除去し、軽量化と運動性、ならびにペイロードの確保を行っている。 またSSでは水平に4枚設置されていた主翼の配置を改め、2枚を可変式尾翼として背部に配置する事で、最大速度の低下を最低限に抑えつつ運動性を向上させている。 ●可変中 更に対空・対地などの複合任務に対し、全ての面で常に最高水準の火力を維持するのは不可能であるため、更に機体武装の設置位置を主翼下のハードポイントに集約・独立させ、大幅にオプションユニット化することで本体重量の軽量・簡易化とマルチロール化を図り、汎用性の向上によって総合的な戦闘力を大幅に上昇させている。 また機体構造の簡易化を行った副次的な効果として、BWSによる簡易可変システムの導入が可能となり、4枚翼の可変によって、推力を1方向に集約させての高速機動を主眼に置いた『ファイター』形態の他に、推力配置を拡散させる事により、神姫的な運動性や白兵空戦を考慮した『アサルト』形態の2種の可変形態をとる事が可能になった。 尚ハードポイントの設置位置の都合上、特に後述するヘビーウェポンバインダー装備の場合、アサルト形態ではLC3レーザーライフルのハードポイント固定状態での効率的運用が困難になる(下、もしくは限定された角度の後方にしか発射できない)等、ハードポイントに設置された火器の運用に不具合が出るケースが多く、アサルト形態では火力不足に陥りやすい傾向がある。 ●ファイター形態 武装に関してはマルチロール化を果たしてはいるものの、主に運用されるのは『LC3レーザーライフル』、2連装式の大型・中~長距離ミサイルの『バニッシュミサイルポッド』、5連装式の中~近距離用マイクロミサイル『UUM-7マイクロミサイルポッド』を組み合わせた、通称ヘビーウェポンバインダーを主翼下ハードポイントに左右それぞれ1基づつ装備・運用するケースが多い。 それ以外のケースでは、エクステンドブースターなどの増槽類も設置可能であり、それ以外にも基本的に神姫規格の接続システムを持つ装備であれば装着可能となっている。 またそれとは別に、神姫本体の肩部に装甲版を兼ねたパイルバンカーユニット『フッケバイン』を装備し、突撃戦時に用いる。 小野一樹 (イメージCV、小野大輔) 疾風のマスター。 私立大学に通う大学生で、スラリとした長身のプロポーションと常にスマイルを絶やさないのが外見的特徴。 だれに対しても人当たりがよく常に温和な態度で接するが、時々黒い発言をサラリと吐く。 疾風にある意味偏った教育を施しており、絆事件の実質的な元凶と言える。 疾風 (イメージCV、植田佳奈) 小野の神姫、寅型MMSティグリース 一般的な寅型以上に過激な性格であり、感情の起伏が極めて激しい。 よく言えば何に対しても純粋で素直、悪く言えば考え無しにその時点での思ったことを吐き出す短絡的な性格。 元々こんな性格ではなかったらしいが、小野に仕込まれたのと、対戦相手に対し連戦連勝を重ね自分の実力に過剰な自信を持つようになった結果、あのような性格になったらしい。 戦闘時は寅型(及び丑型)装備を確実・最大限にに使いこなす正統派戦を得意とする。 シンキカイザー時は基本動作以外の制御をほぼ全て真鬼王AIにゆだねている。 実は起動してから然程月日が経っておらず、その為まだサードリーグ所属。ただ上位には食い込んできている。 トップへ戻る
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前編:彷徨姫 それは今から二週間ぐらい前だった。オレはいつもの様に『ポーラスター』で子供から大人までいろいろな人が神姫バトルをしている所をぼうっと眺めていたんだ。 『ポーラスター』は秋葉原を中心とする激戦区の中でも大きいゲームセンターの一つで神姫オーナーも多い大人気のバトルロンドの場だった。そのオーナー達の性格や印象も良く、神姫を持たない私でもあまり気にされることもなく、観戦する事ができる。たまに神姫を持っていない事で声もかけられるが、その事を言うと見やすい場所を案内してくれることもある。 優しい人達で周りのゲームセンターよりも居心地がよかった。 「ビィィィ!キュウゥブッ!! フルヴァーストォ!!」 「サー、コマンダー」 やたら暑苦しい人が叫ぶとB3(ビー・キューブ)と呼ばれた重装備のヴァッフェバニーがバズーカ砲、ロケットポッド、さらに二基のガトリングガンを構え、それを上空にいるアーンヴァルMk.2装備にFATEシールドとコールブランダーを付け加えた武装のアーンヴァルに向かって一斉掃射する 「アンジェラス! ステディプロティション!!」 「はい! ご主人様!!」 アンジェラスと呼ばれたアーンヴァルはB3の放つ大量の弾幕をFATEシールドのスキル ステディプロテクションで防御をし、B3のフルバーストを防ぐとリアユニットにマウントしてあるコールブランダーを抜きはなって、二つのビット リリアーヌを伴って、前進を始めた。 「牽制からライトニングソードだ!!」 「ええ!」 マスターの指示でアンジェラスはあらかじめ、時間を稼ぐためにリリアーヌをB3に飛ばし、コールブランダーを掲げてチャージを始めた。 飛んでいく二つのビットはB3めがけて左右から突撃を仕掛ける。狙われたB3はその攻撃をガトリングガンの段幕で迎撃するが、一つは破壊したものの、もう一つは片方のガトリングガンにつっこみ、自らもろとも爆発した。 さらに巨大なエネルギーブレードを形成し、チャージが完了したライトニングソードをアンジェラスが勢いよく振り下ろしてくる。 「ンンンンGoGoGoGoオォゥ!!! ビィィキュゥゥウブ!! カウンタァー! ショットォ!」 「サー、コマンダー」 振り下ろす直前、B3は残ったガトリングガンを両手で持った上で回避体勢に入り、ライトニングソードが目の前の地面に突き刺さって安全になった瞬間、反撃のガトリングガンを放つ。 が、かろうじて反応したアンジェラスはそれを避けて、反撃の被害を最小限にしようと動いた。 その瞬間、あらかじめルートを予測したかのようにバズーカがアンジェラスに着弾し、墜落した。 「きゃぁ!?」 「アンジェラス!?」 「ンフフハハアアアァッ! これが俺たちのトゥオルィック!! ビイィキュウゥブ! 追撃ぃ!!」 「サー、コマンダー」 それは確かにトリックだった。ガトリングガンで弾幕を張って、相手の避けるルートを限定し、威力の高い本命のバズーカを確実に当てる。すごく合理的な戦術だ。 このまま、アンジェラスを仕留めきれるのだろうか。 B3はガトリングガンの弾が切れたのか、二丁両方を捨てた。代わりに大型のナイフを二本取り出してそれぞれの手で持ち、ロケットポッドの連射で牽制しつつ、接近を始めた。 墜落したアンジェラスはディコ・シールドで素体に当たる弾を防ぎつつ、立ち上がってB3を迎え撃つ。 「勝利は勝ぁぁぁぁぁっつッ!』 「アンジェラス!MOA!」 そして近距離、B3がマスターの叫びとともにナイフで攻撃を仕掛けたその刹那、アンジェラスは鋭い指示に反応して彼女の攻撃を回り込むようにかわした。次にすれ違い様にコールブランダー銃形態でB3を撃ち、リアユニットとマシンガンを分離変形させる。 BM『モードオブエンゼル』だ。 変形した白い戦闘機は背面を無防備にさらしているB3に大量の弾丸を殺到させた。 「Noオオオオォォッ!!?」 背面からの集中砲火にたまらずB3が倒れ、勝敗が決するとマスターの方がとてつもない悲鳴を上げた。 『衛生兵! えーせーへーえぇぇぇぇぇ!!!!』 センター中に響きそうな叫び声が聞こえる中、オレは腕時計を見る。そろそろ夕方にさしかかるいい時間になっていた。戦いの後が気になる所だが、面倒くさいテストが明日あるため、それの勉強のために帰ることにし、『ポーラスター』を抜け出した。 「アンジェラスはかっこいいなぁ。B3もあんな攻撃をするなんて武装神姫ってすげぇ……」 外に出た時、オレは憧れを口にする。オレは武装神姫を持っていなかった。兄貴は初代チャンピオンでバリバリの神姫マスターをやっているが、交通事故に遭って目が見えなくなって以来、オレに武装神姫を話さなくなった。 だからこうしてポーラスターで武装神姫を見ているんだけど、やはりダメだった。 その場にいるのに自分はその場とは違う。そんな気分だ。そんなモヤモヤした気持ちを抱えこみながら歩いているその時だった。トライクで走る小さな赤い影を見つけた。すごく速いそれはすぐに追わないと見失いそうだ。 (何なんだ?) 気になり、それを追い始める。走り出すとさすがに人と神姫の体の大きさの差は大きく、だんだんと追いついていく。 少し走って裏通りに行くと赤い神姫がトライクを止めた。オレがそれに合わせて足を止めると、彼女はそこから降りてオレを見ていた。 「さっきから追いかけてくるのが、君? 何か用?」 鋭い目でオレに質問をしてくる。見た所、アークのりペイント版か何かのような神姫だった。装備で違うのは額から角が生えているぐらいだ。 「何でマスターがいないのか気になったからさ」 「私にマスターはいないよ。ただの野良神姫だ。真の力とは何かを探してる。君は知ってるの?」 「オレに難しいことはわかんないけど、そもそも真の力って何だよ?」 「私は単純な力だけでは勝てないマスターをもったライバルがいる。彼女はその力は自分一人だけのものじゃないと言っていた。奴に勝つためにはそれが必要なんだ」 詰まる所、マスターのいるライバルに負けて、その力が何であるのかを探しているらしい。 事情はよくわからないが、オレにとっては笑ってしまえるほど単純なことだった。 「簡単じゃん! その神姫ってマスターと仲良しなんだなっ!」 「え?」 「マスターの期待に応えたいから頑張ったんじゃないかな。当たり前のような神姫とオーナーの関係さ」 アークに対して自信を持って答える。マスターと神姫の関係は当たり前の事過ぎて普段は考えもしないけど、その当たり前がないとすればどれだけの差があるか。それは多くのオーナーが知っていた。野良神姫やイリーガルが出てきても、絆を持ったマスターと神姫がそれを打ち負かしているのは兄貴がよく言っていた。 「当たり前の……か」 その言葉に何かを感じたのか、アークはフッと笑った。鋭い目も緩んで、何かをつかんだ様な柔らかい表情を見せる。自分にもこんな神姫がいればなんて思ってしまうほどその顔はとてもきれいに見えた。 「なぁ……君……!」 アークがオレに何か聞こうとしたその時、裏通りの奥から、エネルギー弾が彼女めがけて飛来してきた。 アークはそれに反応して避けて、臨戦態勢に入って、アサルトライフルを弾が飛んできた方向に構える。 「この不意打ちを避けるとは大したもんだ」 奥から上から目線の態度をした痩せ型の男がエネルギー弾を飛ばしてきたと思われる、最新型の神姫 蓮華と一緒に出てきた。 「ここはガキが来るような場所じゃぬわぃ。とっとと有り金と神姫をおいて消えぬぅわ」 妙な口癖の蓮華がオレにアークと金を渡せと要求する。どうやら、アークはオレの神姫だと思っているらしい。 「ん? どうしたんだ? その神姫はお前のじゃないのか?」 痩せ型の男が現れて、オレに問う。オレは彼女のマスターじゃない。それどころか、神姫すら持っていない。どう答えればいいんだろう……。 そんな風に戸惑っている時だった。アークがシルバーストーンを構えて蓮華にそれを容赦なく撃ち、堂々と答える。 「そうだ! 彼は私のマスターだ!」 驚いたことにどういう訳か、会ったばかりのオレをマスターだと言い張ったのだ。神姫を持っていないのにこんなことで大丈夫なんだろうか。 「君、私に名前をくれ!」 オレは突然のことに驚いたが、彼女に言われるがままに名前を考える。一瞬の中で思ったことは、彼女と遠く遠くを走り続けたいという思いだった。だから……! 「ああ! 俺は響! お前は百日! 俺の神姫だっ!!」 「OK! 行こう! 響!!」 与えられた名前に応じ、アーク――百日はもう一度シルバーストーンを放つ。 「ははは!! 何だそりゃ!? 即席チームでんなことのほざくんじゃねぇ!!」 「ほほほ。これは獲物じゃぬわ! 死ぬぇい!!」 蓮華と痩せ型の男は即席の俺達の事を笑い、ただのカモだと思って笑うと蓮華がレーザーを回避してそのまま二黒土星爪で百日に襲い掛かる。 それを見た彼女はアサルトライフルを連射して、蓮華の勢いを削ぐ。さらにそれで生じた隙で二黒土星爪を回避しつつ、フォールディングナイフを展開して逆に反撃の斬撃と蹴りを決める。 最後の蹴りの力は強く、蓮華を近くにあったゴミ箱まで吹き飛ばし、叩きつけた。 「ぐぇっ!? な、何だあの出力は!?」 「あの角を見た時からまさかとは思ったが、そのアーク、イリーガルか!?」 百日の蹴りの強さを見て、痩せ型の男が動揺する。どうにも百日はイリーガルというタイプで、とんでもない出力であるらしい。 何なのかはわからないが、こちらに勝ち目はあるという事か。 百日は相手の動揺を気にする事もなく、シルバーストーンで蓮華を狙い撃ちにする。彼女はイリーガルだという事を認識したその攻撃を恐れているらしく、大げさに避け始めた。さらにその中で威力のある二黒土星爪から命中を重きにおいた一白水星剣に持ち替え、ヒットアンドアウェイ戦法へと切り替える。 「くっ……!」 身軽な装備でちょこまかと動き回って、百日を攪乱していく。百日もアサルトライフルとナイフで応戦するものの、その動きは早く、なかなか捉えることができない。 イリーガルと動揺はしているものの、蓮華にも素体の改造が加わっており、百日並の強さがあるのかもしれない。 強さがどうとかは置いておいて、このままでは小回りの利かない百日が押される。アサルトライフルとナイフでは仮に当たっても決定打にはならない。何とかしてレーザーを一発放り込み、追い込めれば……。 「……そうだ! 百日!! アサルトからレーザーにつなぐんだ!」 「なるほどね……。わかった! やってみる!」 何とか読まれない程度に百日に命令を下し、彼女はそれを実行するために距離をとりながらアサルトライフルを準備する。 「何かは知らねぇが、素人の作戦なんてうまく行きっこない! そのまま潰せぇ!」 痩せ型の男は何の作戦なのかわかっていないのか、依然として剣による攪乱攻撃を蓮華に続けさせている。 これならやりようはありそうだ。 百日は回避し、蓮華の隙を伺っている。オレもそれを見ていた。相手は直線的に動いているに過ぎない。 次の隙が生じるまでの時間はそう長くはないはずだ。 「……今だ! 百日!!」 「行けっ!!」 隙を捉えたオレが百日に合図を知らせると彼女はそれにならってアサルトライフルをばらまく。 「当たらぬわ!!」 そうすると蓮華は反射的に回避行動に移る。その時だった。その回避した先からレーザーが飛来し、蓮華の腹を貫いた。 「ぬわにぃ!!?」 「蓮華!? くそっ!!? どうなっているんだ!!」 まさか、避けた先にレーザーがやってくるとは夢にも思わなかったのか、痩せ型の男と蓮華は激しく動揺する。 オレも内心、成功するかどうかヒヤヒヤしていた。これはB3のやっていたトリックを真似たものだ。 覚えていたので再現した即席だったため、上手く行くか心配したが、これで決定打は与えられた。 「当たった……これが……」 「百日! そのまま、追撃!!」 「あ、ああ!」 まさか、当たるとは百日も思っていなかったようで驚いていたが、オレの命令にマガジンを二つ装填する。 「インファニット∞アサルトだ!!」 「終わりだぁぁっ!!」 スキルを放つとレーザーでダメージを負って動けなくなっている蓮華に当たり、弾丸が装備を破壊し、彼女を戦闘不能に追い込んだ。 「ぬおぉぉっ……!?」 「蓮華!? くそっ!! 覚えてろ!!」 蓮華が倒れる状況に驚きながらもこのままではやられると思った痩せ型の男は彼女を持ち出し、逃げ出した。 それを見て、戦闘が終わったと判断した百日は武装を解除し、トライクモードに戻した。 「響。ありがとう。この勝ちは君のおかげだ」 「百日だって頑張ったじゃないか! これは二人の勝利さ!」 戦いが終わると礼を言ってきて、オレは思ったことを返す。そうすると百日はニッと笑って見せ、手を出した。 「そっか。頑張るって言葉、教えてくれ」 「ああ! 頑張るぜ!!」 「じゃあ、それをみせてくれ」 オレはそれに応じて百日の小さな手に握手した。こうしてオレと百日は無い者同士がパートナーとなった。 イリーガルがどうとか痩せ型の男が言ってたけど、百日が悪い奴の手先なんかじゃないのはわかってる。 誰かがもう一回、そんな事を言ってきたら胸を張って「百日が悪い奴なんかじゃない」と言ってやろうと思う。 テストが終わったら、兄貴は一人暮らしだから、悠にイリーガルについて聞いてみよう。あいつなら神姫をよく知っているし、百日のイリーガルについて何か知っているかもしれない。 「百日。よろしくな」 「ああ」 明日のことを考え、決めるとオレは百日と共に自分の家に帰る事にした。 ひとまず、帰ったらテストの予習を済ませないとならなかった事をすっかり忘れていた。 これで成績が良くなかったら母さんにこってり絞られてしまう。それだけは避けないとならない。 ……テスト、どうにかしないとなぁ。 戻る 進む
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ぶそしき! これから!? 第3話 『キエン』 3-1 「「……」」 握手を交わす友大と成行に、1人のマスターとその神姫が近づく。 2人はまるでそのことに気づいていない。 神姫達も、じゃれ合って気づいていない。 「やあ」 「「ひゃっ!」」 声をかけられた2人が同時に驚き、短く悲鳴のようなものをあげる。 その際に、握手していた2人の手が離れる。 「だ、誰――あ」 友大が気づく。 「は、葉々辺さん?」 「うん、こんにちは」 友大や成行と同じくらいの背丈だが、高校生である葉々辺誠志郎(はばのべ せいしろう)の姿があった。 どことなく人の良さそうな顔に笑みを浮かべ、以前会ったときと同じ薄く青みの付いた眼鏡をかけている。 「こんにちはぁ」 少年の肩に乗っている神姫も笑顔であいさつする。 ヒイロとは同じエウクランテ型だが雰囲気はずいぶんと異なる、小鳥のような印象と服装の神姫、クラハだ。 「知り合い?」 「うん、成行さん。僕たちが初めて対戦した人たちだよ。 ちなみに僕たちより年上だから、同じくらいの背丈だけど高校生だから、葉々辺さん」 尋ねる成行に、友大が自分達より年上であることを強調しつつ紹介する。 「……ぇ?」 「あははは……」 驚きに目を丸くさせ、絶句する成行に葉々辺は乾いた笑いを浮かべる。 「まあ、それはさておいて……今のバトル見ていたよ」 「え?」 葉々辺の発言に、友大が思わず聞き返す。 脳裏に先ほどのバトルが再生され、その時にやらかしてしまったことも思い出される。 「面白かったよぉ♪」 「あう……」 クラハの素直な感想に、何故か打ちのめされたような気分になる。 「まあ、プラモから分捕ってのアレは珍しくないことだから」 「ああいうことから学んでいくんだよねー」 「ぅぅっ」 何故か、相手のフォローが逆に心に突き刺さるような気持ちになる。 「お! また、会ったなぁ」 「おっす! こんにちはなのだ!」 葉々辺達に気づいたヒイロとチャオが、じゃれ合うのを中断してあいさつに来る。 「こんにちはぁ。また会ったね」 あいさつを交わし、クラハが自身のマスターを見る。 「ああ、行っておいで」 察した葉々辺が頷く。 それを見たクラハは自身のマスターの肩から軽やかに降りて、神姫達の輪に入る。 「バトル見たよぉ。凄い飛ばしっぷりだったねー」 「おっ! 見てたのか? いやー、スカッとしたぜ!」 「ぬぬぬ……、次はチャオがジェットなアッパーでやり返してやるのだ!」 「……」 葉々辺が微笑ましそうに神姫達の様子を眺める。 (そう言えば葉々辺さんって、僕たちより神姫のことに詳しいよね? 見た目はそうは見えないけど、高校生だし) そんな葉々辺の横顔を見ながら、ふと、友大はそんなことを考える。 「あの……」 思い切って尋ねる。 「ん?」 「武装って、どうにか手に入れられないですか? その、お金あまりなくて、ヒイロに大した武装をあげられなくて……」 今回のチャオとのバトルでは勝った。 しかしやはり武装のことが――特に防具がないことがゲーム的な有利不利の意味でも、見た目的な意味でも――少年の気にかかる。 「ん~……。お店で売っているのを買うのが一番無難なんだけど、お金ないんだよね?」 「……はい。パーツを買うには足りなくて、買ってあげられないんです」 自分の神姫を少し見やり、友大は少し情けなさそうに手持ちが少ないことを伝える。 「足りなければ、頭を使って工夫すると良いよ。自分で作るとかね。成行……ちゃんで良いかな? みたいに」 「「え?」」 葉々辺の発言に2人の声が重なる。 1人は今の話に自分の名前が出たところに、もう1人はチャオのクロースアーマーを思い出して、思わず声を出してしまう。 「え、ええ、でもあれ……」 成行は自分の神姫の言葉を思い出し、顔をうつむかせて恥ずかしそうに言葉をにごす。 「見たところ、あのアーマーはフェルト製みたいだから、打撃とかにはある程度有効なんじゃないかな。 単に防具として使用するだけなら、ああいう形と材質でも効果あるからデータチップもいらないし。手近なものを利用するって良いことだと思うよ」 葉々辺があのクロースアーマーを評価する。 その言葉には偽りはない。 「後はできるだけ動きの妨げにならないように、自分の神姫と一緒に調節していくと、もっと良いんじゃないかな」 「は、はい! ありがとうございます」 (――あ。見た目には触れていない) アドバイスにお礼を言う成行を見ながら、友大はそんなことを思う。 「そう言えば佐伯君。君達はどんな武装が一番ほしいのかな?」 話に一区切りつけて、葉々辺が友大に向かって尋ねる。 「え? どんな武装が一番、ですか?」 「っ!」 「う~ん……」 思わず考え込むマスターとは対照的に、その神姫は即座に叫ぶ。 「剣! オレかっこいい剣がほしい!!」 いつのまにか話を聞いていたヒイロが、手を挙げかつジャンプをしながら全身で主張する。 その様はある種の必死さと、幼い子どもがオモチャをほしがるような微笑ましさを感じさせる。 「君の神姫はそう言ってるけど、君自身の意見は?」 「……」 先ほどのバトル、そして今までのことを振り返って友大は考える。 「隙あり! 次の鬼はヒイロなのだ!」 「あ! てめ――」 自身の主張をしていたヒイロが後ろに忍び寄っていたチャオに気づかず、鬼にされる。 いつの間にか卓上で鬼ごっこをしていたらしい。 チャオたちを追ってヒイロが猛然と追いかける。 「……僕としては、アーマーがほしいです。 今のろくにアーマーがない状態だとダメージも大きいし。その、ヒイロになにか、かっこいいのを着せてあげたいし……」 ヒイロ達を眺め、友大が考えた末に自身の意見を出す。 「胴体部分のアーマーってことかな。そして、格好良いと」 「あ、でも。僕は裁縫もパーツを作ったりするような技術はとても……」 「お、お裁縫なら一緒に勉強しよ! クロースアーマー、次はちゃんとしたの作りたいから」 裁縫という言葉に成行が反応する。 「クロースアーマー。布……あっ」 友大達でもできそうなアーマーについて考えをめぐらしていた葉々辺が思いつく。 「ちょうど良い方法があるかも。スパンコールって知ってるかな?」 「え?」 「はい。服やかばんとかに付けるキラキラしたもののこと、ですか?」 怪訝そうにする友大とは対照的に、成行はすぐにその存在に思い当たる。 「そうそれ。服とかを飾るための材料の一種で、光を反射させるために使うものだよ。穴の空いた金属やプラスチックの小片のような形をしている」 葉々辺が友大にも分かるように説明する。 「それを使ってスケイルアーマーを作ったらどうかな? スケイルアーマーは知っているよね?」 「「うん」」 プレートアーマーほどではないが、ゲームや漫画などで見かけることもできるため、2人はその鎧の存在を思い浮かべることができる。 「スケイルアーマーは、丈夫な布や革の下地に金属や革などの小片を紐やリベットで鱗状に貼り付ける鎧なんだ。 その要領で、布かクロースアーマーにスパンコールを付けていくと作れるんじゃないかな?」 「あ、そうか! ……あ、でもスパンコールって、どうやって付けたら……」 友大は喜び、そしてすぐに出てきた疑問に消沈する。 「スパンコールは縫い付ける以外にも、手芸・布用接着剤で貼り付けていくと良いよ。 頻繁に洗濯しても取れない強力なやつがあるから、バトルでも大丈夫じゃないかな」 「接着剤でいいんだ」 友大の疑問に葉々辺がすぐに答える。 自分でも作れそうなことに、友大の表情が明るくなる。 「あ、うちにその接着剤があるから、もし良かったら、その、一緒に作らない、かな?」 「え、良いの? うん、一緒に作ろう」 「スパンコールは手芸用品店や均一でも売ってるよ。 特に均一では色々と安く手に入るかもしれないから、他に何か武装になるような物を手に入れられるかもしれないね」 盛り上がる友大と成行を笑顔で見ながら、葉々辺がさらにアドバイスをする。 そんな彼らに声がかけられる 「おーい。ハバネローー!」 ジーンズにハイネックのパーカー付きのジャケットといった服装の少年が、友大達の方に向かって手をふって呼びかける。 背は友大達よりずっと高く、年上だ。 少し伸びた髪を後ろで結んでいる。 顔立ちは整っている方だが、どこかやんちゃな雰囲気で2枚目になり切れない印象を受ける。 「ごめん。待ち合わせてしているんだった」 呼びかける人物の存在に気づき、葉々辺がクラハを呼び戻す。 「あ、マスタァが呼んでる。ごめん、また遊ぼうねー」 寸での所でひらりと身をかわしつつ、クラハはバイバイと手をふる。 「にゃ、またなのだ!」 「おう! またな!」 寸での所でかわされて卓上にダイブしたままのチャオと、ヒイロもまた手をふる。 「それじゃまた」 肩にクラハを乗せて、葉々辺が友大達のもとから去る。 「あ、はい。それじゃまた」 「ありがと。葉々辺さん」 先ほど声をかけてきた少年に向かって手をふる葉々辺を見ながら、友大はふと思う。 (ハバネロって、葉々辺さんのこと? ……あだ名?) ■ ■ ■ 「ねー、マスタァ」 「うん?」 待ち合わせの相手の1人である少年のもとに向かう葉々辺に、クラハがささやく。 「ヒイロがね、【剣】が欲しいって言ってたよぉ」 「はは……」 葉々辺の脳裏に、武装で何が一番欲しいかという話題に真っ先に【剣】と答えたヒイロのことが浮かぶ。思わず苦笑がもれでる。 「どんな剣が欲しいって、言ってたのかな?」 「熱く燃え盛る、炎の魔剣みたいなのが、欲しいんだってー」 気軽に世間話をするかのように、クラハはヒイロが望む剣のことを話す。 「まるであの子自身だねー。うん、きっとすごく良く似合うよぉ♪」 「……ああ。ぴったりだ」 以前の対戦でレーヴァテインを装備していたこともあり、ヒイロが炎の剣を持つ姿を想像するのは容易い。 その姿は、まるで違和感なく自然に思い浮かぶ。 「――っ」 閃きが迸る。 少しだけ足を止めて、刹那に思索する。 葉々辺少年の顔に、何か面白いものを見つけた子どものような、何かををたくらむようないたずらな笑みが浮かぶ。 「~♪」 ふとクラハの方を見やる。 いつもと変わらないかのような屈託のない笑みを浮かべている。 その頭を優しくなでてあげてから、再び歩き出す。 前へ / 次へ トップページ
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6th RONDO 『愛しています、私のバカマスター ~1/3』 携帯電話には携帯ショップがあるように、武装神姫にも神姫専門ショップが存在する。 神姫センターと呼ばれる店舗だ。 そこでは神姫やパーツの購入、検査、修理を行うことができ、またバトル用の筐体を初めとして様々な設備 (神姫 “で” 遊ぶためだけでなく、神姫 “が” 遊ぶためのものまである) が揃っている――らしい。 竹さん曰く、とにかく神姫のことで困ったらとりあえずここに立ち寄ればいいのだとか。 しかし、俺が神姫を購入する店としてボロアパートから比較的近いヨドマルカメラを選んだように、近所に都合よく神姫センターがある、なんてことはなかった。 (ヨドマルを選んだ理由は他に、姫乃と同じ場所で買いたかったとか、ポイントが貯まるとかそんなものだ) いくら神姫がそこそこの人気を誇るとはいえ、携帯ショップのようにどの町にも神姫センターがあるのかといえば当然そんなことはなく、主に新幹線が停車する主要な駅の側くらいにしかない。 だから、ボロアパートから徒歩十分の工大前駅、そこから電車で二駅のところに神姫センターがあるのはまだ良いほうだと言える。 ジャスコのような大型店舗がどーんと聳える代わりにゲームセンターもないような田舎だと、神姫バトルは専ら室内の手作りスペースで行われ、強者になると例え火の中水の中草の中森の中土の中雲の中姫乃のスカートの中 「ちょっ!? やめてよ!」 だろうとお構いなし、熱く燃えたぎるハートはお巡りさんに声をかけられるまで冷めることはないという。 よいこのみんな、こんなオトナになっちゃダメだゾ☆ さて。 勿論俺達が (主に姫乃が) 野外プレイなどという破廉恥な真似をするはずもなく、今は竹さん、または鉄ちゃんこと竹櫛鉄子さんの案内のもと、神姫センターへ向かっている最中だ。 用事はもちろん、神姫バトル。 俺の眉間に穴を空けたニーキにギャフンと言わせるための、復讐の輪舞曲。 俺に代わって悪魔に鉄槌を下す戦乙女は―― 「ふふっ、神姫センターってどんなところなんでしょうね! 楽しみですね、マスター!」 胸ポケットから顔を覗かせたエルは今朝からずっとこの調子で、大好きなアニメの劇場版を観に行く子供のようにはしゃぎっぱなしだ。 もうちょっと、ほんの少しでいいから緊張感というものを持ってほしい。 それに、せいぜい 15cm 程度とはいえその体の中にギッシリと機械部品を詰め込んだ神姫がポケットの中で動くと服が引っ張られて首が痛いのに、ご機嫌斜め上のエルはそんなことはお構いなし。 首も痛いが、周りの乗客の目も痛い。 「あーわかったわかった。 もうすぐ電車降りるからせめてそれまで静かにしててくれ (ひそひそ)」 「了解です。 ところで我がマスター (ひそひそ)」 「どうした我が戦乙女よ (ひそひそ)」 「私、マスターはてっきり “そういうこと” に無頓着な人だと思ってました (ひそひそ)」 「なんだよ、そういうことって (ひそひそ)」 「ここからだとよく見えるんですが、ちゃんと鼻毛の処理をしてるんですね (ひそひそ)」 「余計なお世話だ!」 「背比うっさい」 「はい……怒られたじゃねぇか (ひそひそ)」 「それはそうですよ。 電車の中ではお静かに (ひそひそ)」 「てめっ! こ、こほん…………後で覚えてろよ、全力でくすぐり倒してやる (ひそひそ)」 ヨドマルカメラの売り子として起動されたエルはほとんど店の外に出たことがなかったらしく、神姫春闘事件後の花見やボロアパートへ帰ってからはずっと、元から丸い目をさらに丸くして輝かせていた。 見るものすべてが珍しい。 目に映るものすべてが面白い。 その日の夜は唯一の所持品だったクレイドルも使わず 「今日はマスターと一緒に寝ます。 いいですよね」 と俺の枕元に横になり、タオルハンカチをかけて眠っていた。 そんなんで眠れるのか心配だったのだが、その一日はエルにとっては世界が変わるような一日だったからなのか、ベッドから落ちることもなく、ぐっすりとバッテリーが枯渇するまで眠っていた。 (一日動きまわった上にデータ整理にかなりの電力を食ったらしく、素のアルトレーネ型の抑揚のない声が耳元で 『バッテリー容量が不足しています。 すぐに本体をクレイドルに寝かせて充電して下さい』 と言った時は心臓が止まるかと思った) そういったわけでエルは今日が神姫センターデビューデイとなるのだが、このテンションの高さの理由はそれだけではない。 「ところでマスター、どうですか? 似合ってますか? (ひそひそ)」 「なーにが 『ところで』 だ。 いくら似合ってたって、そう何度も何度も同じこと聞かれちゃ 『似合ってない』 って答えたくなるぞ (ひそひそ)」 「こういう時は素直に 『似合ってる』 って言えばいいんですよ。 何度でも 『似合ってる』 って褒めちぎればいいんですよ (ひそひそ)」 神姫は基本的にマスターの好みで服を用意しなければ素体のまま過ごすことになり、“素っ裸”に見えないように素体にペイントが施されていたり細かいアクセサリが付属していたりする。 アルトレーネ型の場合は豊かな胸から臍より上の辺りまでを濃い青でペイントされ、首元と腕、脚はそれぞれ純白のカラー、ロンググローブ、サイハイソックスだ。 おまけにショーツはガーターベルト付きのようなデザインで、以上、その他の箇所は素肌を露出している。 ここまで挑戦的なデザインに加えて癖のある長い金髪は狙いすぎな感があるにもかかわらず安っぽい扇情さは無く、気品すら感じられるデザインには脱帽するばかりだ。 しかし今日のエルは一味違う。 いくらペイントが施されているとはいえツンツルテンな素体の上に、鉛色の革製ロングコートと、同色のブーツを纏っているのだ。 しかも驚くことなかれ、このコート、ただのコートではなくエルのためだけに作られた世界で一着の特注品なのだ。 ロングコートと言えば野暮ったく聞こえるが、素体の各所にあるくびれにフィットするよう作られているので、出る所は出て締まるところは締まり、よりアルトレーネ型の体のラインを強調している。 右腕の部分は何故か肩から先が無く、また左腕部の袖にはまったく意味を成さないベルトがぐるぐると五本ほど巻かれており、この左右非対称デザインに製作者の趣味が溢れ出ている。 足首まで伸びるスカート部は臍が十分見えるほど大きく前が開かれており、これがもし臍の下から開いているとエルがただの痴女になってしまうことも完璧に考慮されている。 このスカート部にもベルトがぐるりと数本巻かれており、さらに腰に二本、胸を上下に挟んで強調するように一本ずつと、とにかくベルトが多い。 エルがアルトレーネ型だからこそ着こなしているものの、これが他の神姫、例えばあの武士と騎士だったら……似合う似合わない以前に、顔が濃い…… 手に取ってまじまじと見るとその出来の良さに驚かされるばかりの逸品で、これが手作りと聞いたときはさすがに製作者の言葉を疑ってしまったのだが、睡眠時間を削りに削ったその製作者、一ノ傘姫乃の目の下の大きな “くま” はすべてを物語っていた。 (裁縫のことはサッパリ分からないのだが、姫乃の握力では革に針を通せないことくらいは想像がつく。 かなりパワフルなミシンとそれを扱う腕が必要なはずだが……) コートと同色のブーツは女性が好んで履きそうなものとミリタリーオタクが好んで履きそうなものの間を取ったようなデザインをしており、お洒落にもバトルにも使用できる優れものだ。 さすがにブーツまで手作りとはいかないものの、 「鉛色のコートに白の素足って、なんだか卑猥な感じがするの」 と姫乃がニーキのお下がりをプレゼントしてくれた。 これらを受け取って一式装備したエルはしばらくの間、調子の外れた鼻歌を歌いながら鏡の前でポーズをとるのに夢中になっていた。 ヨドマからクレイドルだけを持って俺のところへ来たため新品のアルトレーネ型が持つはずの装備すら持っていないエルに何か買ってやらないと、と考えていたのに、肝心の財布には生活費が残るのみで、単なるおしゃべりフィギュアと化していたエルを立派な武装神姫にしてくれたのが自分の彼女だという事実は、 「マスター! とってもいい彼女さんを持ちましたね!」 と満開の笑顔で言ってくれるエルの言葉と一緒に俺の自尊心をグリグリと抉った。 コートが完成したのは今朝のことで、朝九時頃にパジャマ姿で俺の部屋を訪れてエルに試着させて微調整を終えた姫乃はそのまま俺のベッドに倒れこんでしまった。 そのまま可愛らしい寝息をたて始め、服といえば第三のヂェリーTシャツだったエルがどんなにはしゃいでも、姫乃の寝顔鑑賞を邪魔するように竹さんが俺達を迎えに来ても、姫乃は午後二時まで身動きすらしなかった。 そして遅めの昼食を三人で済ませて今に至る、というわけである。 「傘姫大丈夫なん? まだ目の下がパンダっとるし、フラフラしよるけど、別に神姫センター行くのって今日やなくてもいいんやろ?」 「さっき十分寝たから大丈夫よ。 エルはせっかく今日を楽しみにしてたんだから連れて行ってあげないとね。 それに今日を楽しみに待ってたのはエルだけじゃないのよ。 ね、ニーキ?」 「……」 姫乃の今日も変わらぬカッターシャツの胸ポケットで大人しくしているニーキは何も言わず、車窓の外を眺めていた。 このニーキも、今日は素体のままではなく服を着ている。 これがまた姫乃オリジナルらしいのだが、その姿を見たときはエルのコートと並べて姫乃の趣味を少しだけ理解できたような気になった。 燕尾服である。 オーケストラの指揮者が着るような、読んで字の如く裾が燕の尾のような形をしたアレだ。 エルのコートとは違い大幅なアレンジは施されておらず (細かいこだわりはあるのだろうが、そもそも俺は燕尾服に詳しいわけではない)、取り外し可能な空色のツインテールがなくなってショートカットとなった悪魔型は男装の麗人型へと進化を遂げていた。 ニーキの冷静で淡々とした雰囲気と相まって、その端麗な容姿は華やかさを除けば宝塚のトップスターのようだと絶賛しても過言ではない。 ……俺が神姫を買うことに随分と抵抗してくれた割に、姫乃は神姫を男装させて眼の保養をしていたってわけだ、へぇそうなんだ、などと嫌味を言うつもりはないけれども。 男にだって嫉妬というものがあるのだと、彼女に知って欲しい背比弧域であった。 「ヒメに面と向かって言い難いのならば私が伝えておこう」 「やめろ。 そして俺の心を読むな (ひそひそ)」 「ほれ、二人とも電車降りるよ。 お~い傘姫生きとる? 寝たら死ぬぞ~」 姫乃のことを傘姫と呼ぶ女性、竹さんは姫乃の高校時代からの親友らしく、この少々独特な方言 (彼女曰く、北九州ベース博多アンド鹿児島アレンジなのだそうだ) はともかくとして快活な性格が外見にも表れていて、大学の益荒男共の評判はすこぶる良い。 いや性格が云々以前に、姫乃が “可愛さと美しさを足して2を掛けた” ような容姿ならば竹さんは “可愛さと快活さを足して1.5を掛けた” ようなものだ。 残り0.5は、身長こそ姫乃と大差無く俺の頭一つ分低いくらいなのだが、姫乃が持ち得ないシルエットのメリハリだ。 寧ろ益荒男共にとってはこの0.5が何よりも重要なのかもしれない。 短くサッパリとした髪に全身を春のシマムラコーディネートで固めていても何ら違和感がないのだから、その戦闘力は姫乃に一歩も引けをとら…… 「ん、どうしたの? 目のくま、そんなに変かな?」 ……いや、やはり姫乃のほうが圧倒的に可愛い。 アルティメットカワイイ。 ヒメノ型神姫とか発売されないだろうか。 いや、ここは竹さん風にカサヒメ型といったほうがそれらしいか。 「ほれ、あの建物。 まるまる一棟が神姫センターなんよ」 俺がカサヒメ型に自分のことを何と呼ばせてどんな武装をさせるか妄想を膨らませているうちに、何時の間にやら俺達一行は神姫センターの近くまで来ていた。 ――とりあえず、カサヒメ型の姉妹機はセクラベ型で保留としておこう。 神姫センター一階はさすが専門店というだけあって、ヨドマルとは比べ物にならない商品の充実っぷりだ。 客の相手をする神姫もヨドマルよりはるかに多く、ほぼ全種類の神姫が小さな体を元気一杯動かしているのを見ているだけで時間が過ぎてしまいそうだ。 「ほらマスター見てください! アルトレーネ型がいますよ! うわぁ隣にアルトアイネス型もいます! ちょっとお話ししてきていいですか? いいですよね! 行ってきます!」 勝手にポケットから棚に飛び降りたエルは完全武装のアルトレーネとアルトアイネスのほうへ走っていった。 そういえばエルは “動いているアルトレーネ” を見るのは鏡に映る自分を除いて初めてになるのだろうか。 今まで店員として働いていたエルが今日は客なのだからはしゃぐのも多めに見てやるが、あまりウロウロされると姫乃クオリティが目立って目立ってしようがない。 「あのアルトレーネのコスプレかっけー。 ここコスプレの服とかも売ってんのか」 「下の中古売り場にあるんじゃね? でもクソ高そー」 「うわまた懐かしいものを。 なんだっけあのコート。 ほら、三〇年くらい前のFFの」 「クラウドでしたっけ? 流行りましたねーあれ。 でも似てますけどコートは着てなかったような」 まあ、褒められて悪い気はしないけれど。 これでは落ち着いて店内を見て回ることもできない。 それに今日は姫乃と竹さんもいるのだからあまり出過ぎた行動は――と二人の方を見ると、何故か竹さんの前に人集りができ、エル以上に衆人の目を集めていた。 「あー今日は神姫連れてきとらんからバトルはまた今度、また今度、だからまた今度っつっとんのやから並ばんでよ! なーらーぶーな、前へならえすんな! 予約なんか受け付けとらんっての! どさくさにアドレス渡されても困るってのアポ取ろうとすんな!」 竹さんの前に老若男女問わず並んだ人達は武装した神姫を連れていて、神姫達は皆武装の確認をしたり素振りをしたりと落ち着き無く、マスター共々鼻息を荒くしていた。 ほら散った散った、と大人気な竹さんが人々を追い払い、やれやれと大きなため息をついた。 竹さん大人気の理由を姫乃が教えてくれた。 「鉄ちゃんってね、実はすっごく強い神姫マスターなのよ。 以前私をここに連れてきてもらったときもこんな感じだったわよね」 「いっつもそう。 これじゃおちおちメンテもできんもん。 そらまあ、私のコタマはそこそこ強いしバトルしたくなるのも分からんでもないけど、そんな何人も相手にできるかっての。 コタマのバッテリーは普通の神姫と変わらんっての」 「へぇ、竹さんってそんなに強いのか」 「うん。 たぶん今この神姫センターにいる誰よりも強いわよ」 「ここって……結構な人数だぞ?」 うんうん、と頷いた姫乃は自慢できる友人がいることが嬉しそうだ。 「あー傘姫、恥ずいからあんまし……」 「私も他の人に聞いた話なんだけどね、ここで大会が開催された時のことらしいんだけど」 「その大会の優勝者が竹さんってわけか! すげぇ!」 「ううん、鉄ちゃんは観戦してただけなんだって。 それでね、その時優勝した男の人が表彰台の上から鉄ちゃんを見つけて、一目惚れしちゃったらしいのよ。 その人が、たぶん優勝して少しだけ気が大きくなってたんでしょうね、その場で鉄ちゃんに告白したんだって。 そうよね?」 「……まぁね。 告白っつーか、私のこといきなり指さして 『今! あなたに惚れました! エンジェルktkr!』 やもん。 恥かいたわあ、あん時はほんと」 「でも竹さんに彼氏がいるって聞いたことないし、ってことはそいつのこと振ったのか」 「背比、今しれっと傷つくこと言ったね……振ったっつーか、その場のノリで 『じゃあ神姫バトルで私に勝ったら付き合ったげる』 って言ってしまったんよ。 うん、ノリで」 ノリノリで。 と竹さんは額を抑えて自分に呆れている。 それはそうだ。 大会優勝者、言うまでもなく最強の神姫に勝負を挑むなんていくらノリといっても愚行にも程が……ん? 「でも竹さん、彼氏はいないって……あれ、どういうことだ?」 「その場におった全員がチャンピオンが勝つって疑いもせんで、チャンピオンに挑んだ私は負けて彼氏ゲットする腹積もりと思われて、そのチャンピオンの神姫にまで 『ま、アタシのマスターはそこそこイイ男だし? アンタが考えてることも分かるよ。 それなりに手加減してやるから、適当に頑張って適当に負けて、彼氏ゲットしたら?』 って鼻で笑われて――」 眉間に皺を寄せてその神姫の嘲りを腸を煮えくり返しながら思い出しているらしい竹さんは口角を釣り上げ、凄絶な笑みを作った。 「――そんな状況で相手を完膚無きまでたたきのめすのって、ゾクゾクしたわぁ」 「ドSだ! ここにドSがいる!」 「相手の神姫、花型ジルダリアだったんだけど、手加減どころか指一本触れられずに負けてそれ以来トラウマになっちゃったんだって。 ちょっと可哀想」 「そうなん? それは知らんかった」 「未だにハーモニーグレイスを見ると足が竦んで動けなくなっちゃうんだって」 「 【 あらららら それはひどいな 超wざwまwあw 】 」 「ドS俳句だ! 姫乃気をつけろ、竹さんの近くにいたらそのうちヤられるぞ!」 「ふひひひひ! 悪いけど傘姫の体は私がもらっとくよ!」 「このっ、俺の姫乃を食うつもりか!」 「何の話よ!? やめてよ、もう!」 「ただいま戻りましたーって、なんだか楽しそうですね。 私も混ぜてください!」 「…………はぁ」 姫乃の胸ポケットの中でニーキが漏らした深いため息は誰の耳にも入らなかった。 神姫センターは二階から上が武装神姫専用のゲームセンターになっていて、神姫を連れたマスター達が百円玉を何枚も持って遊んでいる。 その中でもやはり二階のバトル用筐体はプレイヤーとギャラリーが多く、どの筐体でも神姫達がマスターやギャラリーの応援を受けて火花を散らしていた。 ビリヤード台に四角形のガラスケースを置いたような外観をしていて、大きさは四方が2m弱から1mくらいと大小様々なものがあり、高さも神姫が飛びまわるのに十分なものだ。 ガラスケースの中は何もなかったり障害物があったり、廃墟、砂漠、滝、サーキット、礼拝堂、無駄にピカピカ光るステージなど、神姫達は例え火の中水の中草の中森の中土の中雲の中姫乃のスカートの中 「しつこい!」 どのような状況であっても冷静に地形を生かす戦い方が求められる。 「お、そろそろ障害物無しの一番シンプルなステージが空くけど、なんか他にバトりたいステージある?」 「エル、どうだ?」 「どんなステージでも問題ありません。 どーんと来いです」 「ニーキは戦ってみたいステージある?」 「いや、私もどこでもいい」 「よし。 じゃ順番取ってくるから待っとって。 筐体使用料はまぁ、今回は私が奢ったろ」 今まさにその筐体ではバトルが佳境を迎えていた。 ありったけのミサイルを全方位に撒き散らす軍隊風の眼帯神姫は、夏の蚊のように襲い来るミサイルを涼しい顔で回避しつつ接近してくる忍者神姫に翻弄されている。 眼帯神姫がまだ起動して日が浅くバトルに不慣れなのは、筐体のガラスに張り付いて必死に応援しているマスターを見れば分かる。 彼女のマスターはさっきから 「撃て撃て撃て! 数打てば中るんだ!」 とだけ繰り返して眼帯神姫を混乱させるばかりで、もう一方の忍者のマスターは椅子にもたれ掛かり余裕綽々といったところだ。 次は俺達の番だ、あんな無様な真似はできない。 そう思うと掌がじっとりと湿ってきた。 相手は姫乃とその神姫なのだから気負う必要なんてまったく無いのに。 勝利への焦燥と敗北への焦慮は刻一刻と強くなっている。 「いよいよ私達の初バトルですね、マスター。 安心して下さい、絶対に勝ってみせますから!」 エルが俺を励ますように力強く宣言した。 その顔には一片の気後れもない。 俺はほんとうに良い神姫に巡り合えたと思う。 普通に神姫を買って、普通に箱を開けて、普通に起動して。 そんな出会い方ではきっと俺は満足できなかった。 このバトルを、これまでエルを育ててくれたレミリアへの感謝と代えよう。 「頼むぜエル。 悪魔に鍛えられたお前の力で、あの偏屈神姫をギャフンと言わせてくれ!」 「了解ですマスター! 戦乙女の名にかけて必ずや、マスターに勝利の美酒を御賞味頂きます! ――ところで、その、私の武器なんですけど、ばっちり用意してくれましたか?」 コートの左袖のベルトをいじりながらそう言って、申し訳なさそうにこちらを見上げた。 ヨドマルで働いていたエルは普通アルトレーネ型に付属するはずの剣などを持っておらず (だからこそ俺のような貧乏人が最新型を買えたのだが)、俺が武装を用意しなければならない。 防具はエルを買った時に姫乃に 「私が用意するから大丈夫。 だから絶対に他のものを買わないでね」 と念を押されて今朝になってコートとブーツをもらい、武器はというと―― 「ばっちり用意しておいたぜ。 戦乙女に相応しいやつを見繕ってきた」 「それなら早く見せて下さいよぉ~。 マスターはあんまりお金が無いから、もう私、言い出しにくくて。 素手で頑張れ! なんて言われたらどうしようかと思ってました」 「はっはっは、すまんすまん。 でもほら、自分の神姫を驚かせたいマスター心を分かってくれ。 ええと……」 鞄に入れていた “それ” を、目を輝かせて 「早く早く!」 とせがむエルに渡してやった。 「ほれ、コイツで頑張ってこい!」 「はい! マス…………た…………………………………………ん?」 筐体では丁度バトルが終わったようで、忍者が彼女のマスターに向かって親指を立てるのを見届けた竹さんが俺達を迎に来た。 「場所空いたけど、傘姫、背比、準備OK?」 「私達はオーケーよ」 「こっちもオーケーだ。 ニーキはもういいのか? まだ遺書の用意ができてないんじゃないのか?」 「問題無い。 エルを倒した後で君の眉間を蜂の巣にしてやるから、今の内に神に祈っておくといい」 「え? え? マ、マスター? こ、これは冗談ですよね?」 「よっし! それじゃ、二人とも両側に座って、そこの丸いとこに神姫を乗せれ」 「姫乃、こんな上等なコートを作ってもらっといて悪いけど、手加減はしてやれないぜ!」 「私だって全力でいくからね、弧域くん!」 「いや、ちょ……………………ええええええええ?」 ――――そして話はプロローグに戻る。 NEXT RONDO 『愛しています、私のバカマスター ~2/3』 15cm程度の死闘トップへ
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3ページ目『フィギュアじゃない』 「ごめんなさい。私はちゃんと玄関からお邪魔しなきゃ、って言ったんですが、この疫病猫が」 「仲間を売って自分だけ助かろうとするとはオマエ、それでもキャッツアイの一員かにゃ。やれやれ、3rd素体の神姫は、猫を敬うこともできないシケた連中ばっかりにゃ」 「貴様がキャツアイを脱退すればいいだけのことだ。難しいことはない」 「にゃんという暴言! 聞きましたかヤンデレお嬢さん。最近さーほむほむがワガハイに冷たいんにゃよー」 「ヤンデレって私のこと? ねえ私のことなの? って、そんなことより――」 時折、弧域と鉄子の話し声が聞こえてくる孤独な部屋は、三人の闖入者の登場により急に騒々しくなった。 引っ越してきて三年目になるこの部屋は未だ、弧域ですら侵入を許されたことのない姫乃の聖域である。人当たり良く素直で通っている彼女(例外あり)でも、部屋の至る所に隠してある有害図書や器具などの秘蔵物の発覚を恐れたりと、他人に踏み込ませない領域というものは人並みにあるのだ。 しかし姫乃は闖入者の姿を見て興奮するあまり、秘蔵物のことなどすっかり忘れ、闖入者達を抵抗なく迎え入れてしまった。自分は机に着いて、三人を机の上に上げてじっくり観察しようと、目を皿にした。 「あなた達って武装神姫、よね? どうして動いてるの? もしかして昔作ったフルラドスの魔法陣で召喚された使者じゃないの? あれは自分でも傑作だって思ってたくらいだもの、他に考えられないわ! そうなんでしょ!」 窓を閉め、弧域とおそろいの電気ストーブのスイッチを入れても、一度冷やされた部屋はそう簡単に暖まるものではない。しかし姫乃は、自分の手がかじかみ動かないことすら、もう眼中に無かった。 恐怖心が綺麗サッパリ霧散した後も、心臓はまだバクバクと鳴りっぱなしで、姫乃は無意識に胸を押さえていた。机の上に立ち、人間のように動き、言葉を自在に話す人形に心をときめかせずにはいられなかった。 主に中学生時代に夢見て、今目の前にいる【異界からの使者】。数年が経過した今であっても、それは姫乃の好奇心をこれ以上無いくらいくすぐった。 「ワガハイ達神姫は立派な科学の結晶にゃ。魔法陣にゃんて痛々しいモノにお呼ばれされた覚えはにゃい」 「うんうん! そうよね、簡単に秘密をしゃべるわけにはいかないものね。大丈夫よ、私はその辺りはちゃんと心得てるつもりだもん」 猫型の武装神姫、マオチャオにキッパリと否定されても、姫乃は肩を落とすどころか、むしろ謎が深まったことを喜びさえしてしまう。まったく未知の3体に触れようとする手を抑えるのにも、早くも限界が訪れそうだった。興奮しすぎてみっともなく鼻息を荒くしていることにさえ気付けないでいる。 ただし。語尾を「にゃ」に変えて話すマオチャオはカタログで見られるようなごく普通の武装神姫だが、姫乃は頭の隅で冷静に (実物は随分とバカっぽいのねえ) という第一印象を受けてもいた。 「レーダーを扱えるのが貴様だけ、というのが問題だな。おかげで俺は貴様に振り回されざるを得ない。しかし使い方を覚えるのも面倒だな……」 ほむほむと呼ばれた神姫も同じくマオチャオだが、言葉遣いだけでなく見た目も「にゃ」のマオチャオとは異なっていた。額に白く無骨なシールドを被り、大きな目の上半分までを隠すように覆うことで目付きが悪く見えてしまっている。胴体も、戦車の装甲のような装備で覆われ、さらに背面には巨大なハンマーがたすき掛けされており、このマオチャオの戦闘への意気込みが見て取れる。しかし脚部だけは何故か、スポーツカーを思わせる真紅の端麗な装備が使用されていて、無骨な上半身に流麗な下半身と、全体的なバランスは大きく損なわれている。 「あの空間に少人数で飛び込むのだけは避けたいですし、カグラの暴走はレーダーとデコイを得る代償と考えるしかなさそうです」 もう一体、部屋に入って最初に姫乃に侘びを入れた神姫はマオチャオではなかった。弧域が飾っているそれと同じ金髪蒼眼の戦乙女型、アルトレーネである。物々しくも洗練された全体的なシルエットを、白と青のコントラストがさらに凛々しく引き立てる豪奢な武装。バイザーを上げたヘルメットが何よりも戦乙女らしさを醸し出しているが、そのヘルメットの頭頂の隙間から何故か、ピョコンと三角形の耳が覗いていて、すべてを台無しにしてしまっている。 三者三様の人形。小さくて可愛らしい、と言うには着飾っているものが少々物々しいが、武器や防具といった日常とはかけ離れた物が、姫乃の妄想をいっそうかき立たせた。 (すごい、すごい、すごいっ!) 見覚えのあるマオチャオもアルトレーネも、実際にそれらが動いているとなれば、姫乃の目にはとにかく素晴らしいものに見えた。なにせ【召喚した妖精や悪魔の類が武装神姫の体を借りて動いている】らしいのだから、召喚の触媒になり得る武装神姫に、興味を持たない理由はない。黒歴史を葬るために切り刻み灰と帰したノートですら (私のバカ、なんで捨てちゃったのよ) と今更になって惜しむ始末である。 「ねえ、少しでいいから、触っていい?」 「ううん、やっぱりマスターと同じように、本当に神姫のことを忘れてしまってるみたいですね」 「目覚めた神姫に触れれば記憶が戻るかもな――よし、心ゆくまで触っていいぞ」 「待つにゃほむほむ。こういう時は普通、自分の体を差し出すものじゃにゃいか。何の躊躇も無くワガハイを差し出そうとするとはアレかにゃ、ワガハイの体は俺の物っていうジャイアニズムに目覚めたのかにゃ」 「あなた達、ジャイアンのこと知ってるの!? そ、それってもしかして、アカシックレコードから引用して、たり?」 「なんだか私、この方に上手く説明できる自身がないんですけど……」 アルトレーネの「説明」という言葉を聞いた姫乃は、椅子の上でサッと姿勢を正して身構えた。異界からの来訪者は、まず召喚者に事情を説明する暗黙のルールがあり、召喚者はそれを聞かなければならない――という【設定】を、忠実に守るためである。彼女の心はもう立派な召喚士のそれへと変貌していた。 「なんでも話して。私、あなた達がどんなに不思議なことを話しても絶対に否定しないから」 「既に変な方向に誤解されてるみたいですが……分かりました。私達も状況をすべて知ってるわけではないので、あまり鵜呑みにしないで下さいね」 コホン、とひとつ咳払いしたアルトレーネはスカート状のアーマーを折りたたんで、その場に姿勢良く座った。ハンマーを持ったマオチャオも、その隣に片膝を立てて腰を下ろした。もう一匹、「にゃ」のマオチャオは姫乃に指で喉を撫でられ、ゴロゴロと喉を鳴らして一人悦に浸っている。 「まずは自己紹介としましょう。私はアマティといいます。こっちのクールなマオチャオがほむほむで――」 「俺の名はホムラだ」 「その馬鹿っぽいのがカグラです」 「馬鹿とはにゃんにゃふにゃあああん♡ そ、そこはだめにゃああぁああ♡」 姫乃の十指による技巧にされるがままのカグラは、最後のプライドを振り絞って拒絶の言葉を吐き出すも、表情も体も既にとろけきっていた。 カグラを弄びつつも、姫乃は一言一句聞き漏らすまいと真面目に耳を傾ける。 「これはこれはご丁寧に。私は一ノ傘姫乃っていいます」 「初めまして一ノ傘さん、と言いたいところですが、実は私達――」 「やあねえ、姫乃って呼んでよ。私達の仲じゃない」 「仲? ……いえ、確かに『実は私達、お会いしたことがあるんです』って言おうとしましたけど、せいぜい顔を合わせたことがあるってくらいで、そこまで親しいわけじゃないです」 「【猫戦乙女の憂鬱】の最終話で会ってるにゃ」 「貴様は黙ってろ」 「そうなの……残念」 「兎に角、まずこれだけは認識して下さい」 力を込めたからか、アマティのヘルメットからのぞく三角の耳がピンと尖るように立った。その耳に手を伸ばしたいけれど話の邪魔をするわけにはいかないと、一人葛藤する姫乃だった。 「私達神姫は、姫乃さんと同じように心を持ってます。妖精だか何だかが取り付いたフィギュアなんかじゃなくて、CSCとこの頭、コアによって見たり聞いたり感じたり考えたりできるMMSなんです」 ■キャラ紹介(3) カグラ 【 2/2 】 彼が幽鬼のような表情で帰ってきた理由を、留守番をしていた次女達はすぐに知ることとなった。彼が鞄から机の上に出したモノ、それは変わり果てた長女だった。 彼が帰ってくるまで騒々しくケンカをしていた次女達が絶句する中、彼はパソコンを起動し、メンテナンス用アプリケーションを立ち上げた。そして淡々と、収集した画像を整理するような無感動さで、次女達のオーナー登録を次々と抹消していった。混乱の極地にある次女達にはもう、彼のやっていることが理解できなかった。 呆然と立ち竦む次女を荒々しく掴んだ彼は、無造作に胸のカバーを開き、CSCを抜き取った。心を失った次女は、内部に精密機器が詰まっているだけの人形となった。だから、自身がゴミ箱へ放り投げられたとしても、反応することはない。 「ひ……」 机の上に散らばっていた【長女だったモノ】も片付けた彼の手が、三女に伸びた。 「ひゃあああああああああっ!?」 三女が駆け出すより速く、彼の手が伸びた。乱暴に掴まれた三女はありったけの力で暴れ、彼の手に噛み付いた。小さいとはいえ戦闘できるよう作られた神姫の力は強く、肉を噛み千切り、力尽くで手の中から逃れることができた。三女の身体が床へ自由落下する。しかし、その床へ到達するまでの時間は、三女にとってあまりに長すぎた。着地の瞬間、床と彼の足裏の間で押し潰された三女からはもう、CSCを抜き取る必要もなくなっていた。 足裏に鋭い痛みが走ることで、僅かに我を取り戻した彼は、荒い息を吐きながら部屋の中を見回した。 四女と五女は姿を消していた。 次ページ『アマティ、キレる』 15cm程度の死闘トップへ
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Gene19の粉ミルクより母乳派(それ以前だし!) にーの丞:猫型まお(電ホビ限定マジョーラ素体) 装備:そもそもテストショットしか出てない奴をSS化するってどーよ 正に生まれたばかりの子猫ちゃん(武装無しだし)。子猫なので耳はヨコ(そういう事にしとけ)起動したてでマスターとはぐれる&よりにもよってにゃーの助に拾われるという不運なんだか悪運強いんだかよくわかんない子猫。セリフ少ないのはまだおつむが足んないからですにー。次登場したら(するのか)もう少しマシだと思うですにー。 imageプラグインエラー ご指定のURLはサポートしていません。png, jpg, gif などの画像URLを指定してください。 にゃーの助:猫型マオチャオ(写真右) 装備:骨董品市で見つけた岩男ペケ用ライドアーマー(写真参照) 何気に最近鉄腕アルバイターと化してた(しかも人型神姫インターフェイス手に入れる為かよ)ヘタレスキーサド風味猫子。成猫なので耳は上。(上過ぎじゃというツッコミは全却下)。今回は力仕事用のライドアーマーに乗って登場だよ~(てか何人知ってるよ元ネタ)。あ、そうそうバイトの斡旋と人型神姫インターフェイスの横流し元は会長さんですよ。 イカロス:セイレーン型エウクランテ(写真左) 装備:ロウで固めた鳥の羽根・・・ってマジか!? とーとーヤラレシーン画像まで張られたもう説明する間も無くヤラレ役なアホ鳥。今回はスズメ? シナトラ:寅型ティグリース 装備:バロームっつーかガッタイダーっつーかブレンドンな合体武装パワードスーツ 何気ににゃーと共同経営でテキ屋やってたフーテンの寅子さん。ちなみにブッケ見つけた後も彼女が金稼ぐ理由は、マツケンが彼女の代金をラインバレルロボティクスから請求されてるから。非合法なコネで脅しかけるハサミからブッケの代金取り立てられない分上乗せで請求されてるそーな。大人ってヒドいね(そゆ問題か) ヘタレマスター:26歳無職 まあ今更説明してどうなるってくらいダメ人間なにゃーのマスター。当然ながら未婚。チョイ役の姉は既婚。ついでにデコ魔ちゃんこと妹も彼氏持ち。まあこの時点で明暗分かれてるわな(酷)ホントににゃーが人型神姫インターフェイス手に入れたらどーなんだかこのヒト。 おまけ:意外に多方面展開! にゃーの助バイト遍歴にゃ! 本屋(Gene4参照。まーデフォルトですにゃ) 神姫服屋『プチトマト』(Gene12参照ですにゃ。けっこうギャラ高いにゃ) 石焼イモ屋他、屋台店(Gene14おまけ、今回参照ですにゃ。焼きイモ屋、アイス屋、わらびもち屋、ポン菓子屋などバリエーション抱負にゃ。あとシナトラと共同経営にゃ) 各神姫メーカーのビラ配り(実は報酬として各メーカーの純正装備一式貰ってたりするにゃ) ちっちゃいもの研被検体(毎度ツボを抑えてるやらキチガイやらで、にゃかにゃか気が抜けないにゃー) 製薬会社被検体(寝てる隙にヘタレに飲ませてるにゃー。たまに青い泡吹くけど気にしないにゃー) 動物園案内員(神姫なら食われにゃいってライオンの間近でさせられたにゃ。まあ調教してやったがにゃ) 菓子工場作業員(なんだかにゃー、ここじゃにゃーとニンゲンが労働効率同じっちゅーのもせつないにゃ) ヒメガミ神姫センターバトル開設(現役にやらせるとはにゃかにゃか斬新にゃ) ピザ屋(ライドアーマーで運んだら速いけど電気代高いって追い出されたにゃ) カラオケ屋(一回神姫演歌歌手と一緒に仕事したことあるにゃ。自慢にゃ) 漫画家アシスタント(ベタが丁寧って誉められたにゃ。まーそりゃ尺度違うし~) ペットショップ(あの犬店員厳しすぎにゃ。後でこっそりケージのカギ開けてお返しにゃ) 目次へ
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そのに「回顧録・一」 僕がのティキを所有する事になってから、日はまだ浅い。 今僕と共にある武装神姫――ティキは、元々亡父の物。言わば形見だ。 つまり僕は自分の神姫と付き合っていく上で、ティキを一から育てると言うメリットを放棄させられたワケだ。 そして手探りで半ば完成されたティキというパーソナリティーを理解していくと言うデメリットだけを負わされた事になる。 それを少しでも克服したいと(愚かにも)思った僕は、夜中にただ一人で無き親父の書斎へと向かう。 ……冷静に考えれば、こんな考え方だから僕は振られたのだろうか? ちなみに、本来神姫はただ一人を『オーナー』と認識したら機能『停止』、観念的に言ってしまえば『死亡』するまで変更することが不可能なのだ。が、ティキの様な『オーナー』死亡の場合に限り、別オーナーへの再登録が認められる。 それまでの神姫のパーソナルをそのまま引き継ぐ為には、わざわざ必要書類をそろえて、郵送し、更にメーカーと再契約しなければならないけど。 それはさて置き。 親父はマメな人物でもあったから、もしかしたらPCに痕跡ぐらいは残ってるだろうとそう思ったのだ。 果たしてそこには『日記』と記されたフォルダが残されていた。 ……痕跡どころじゃねーよ。そのものだよ。 ともあれ、僕はそのファイルを開く。 ○月○日 この日俺はついに武装神姫に手を出してしまった。 こんな事家族に言ったらもしかしたら妻は離婚を言い出すかもしれない。 息子に言ったなら、俺は軽蔑され、冷たい視線を受ける事になるだろう。 でも、お義父さんの神姫を見ていたら、どうしようもなく、たまらなく羨ましくなったのだ。それはもう仕方が無い事なのだ。 俺は食事、団欒の後、なるべく自然に書斎へ戻ると、逸る心を抑えられずすぐさま神姫のパッケージに手をつけた。 MMS TYPE CAT『猫爪』。 俺は焦りながらも慎重に、とにかく家族に気付かれない様、細心の注意を払って開けてゆく。 そこには夢にまで見た神姫が、眠るようにいた。 俺は早速神姫を起動させる。 何かしら説明の様な事をきった後、彼女はおもむろに俺に言った。 「愛称と、オーナー呼称を登録してほしいですよぉ♪」 ……この子は何で歌うように喋るのか? お義父さんの所の娘達は普通に話していたのに??? 「どうしたのですかぁ?」 にっこりと笑って俺を見る。と言うよりそんなものを登録するという事実をすっかり忘れていた。 「……あーすまん。チョット待ってくれ。考える。」 「ハイですぅ♪」 目の前の神姫はそういうとその場でぺたりと座った。 あーかわいいなぁ。……いや、そうじゃない、考えよう。 どうせなら変わったのが良いな。でも愛称は変すぎても可哀想だ。と、俺が頭を捻っている間も彼女は俺をジッと見つめている。……愛らしいなあ。 はた、とそこで思いつく。 「オーナー呼称の方、先でも良いかな? 『旦那さん』と呼んでくれ」 「『旦那さん』ですねぇ♪ ……登録したですよぉ♪」 そういうと彼女は「旦那さん、旦那さんですぅ☆」と何度も言って机の上をピョンピョンと跳ね回った。 そんな彼女を見ていると微笑ましくなる。……正直に言えば、ニヤニヤしている自分を自覚する。 そんな彼女の様子を目で追いながら、俺は愛称を考えていた。 「ダメ大人じゃねーかよ!!」 僕はただただ、PCの前で突っ伏した。なんだか日記も妙に読まれる事を意識した書き方だし。 でも、それと同時に戦慄した事が一つ。 ……確実に僕にもこの親父の血が流れていると実感した事。 終える? / つづく!